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2012 年度 実施状況報告書

生分解性を有する新規カチオン性アイオノマーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24550136
研究種目

基盤研究(C)

研究機関広島大学

研究代表者

中山 祐正  広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273576)

研究分担者 白浜 博幸  広島大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (60127660)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードポリ乳酸 / アイオノマー
研究概要

今回我々は、N-メチルジエタノールアミン (NMDA)を開始剤としてオクチル酸スズ (Sn(Oct)2)触媒を用いてL-ラクチド (L-LA)を開環重合することにより、主鎖中央に三級アミン基を有する両末端水酸基化ポリ(L-ラクチド) (PLLA)を合成し、引き続きヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)を添加して系中で鎖拡張することにより、主鎖に沿ってほぼ等間隔に三級アミン基を有するポリ(エステル-ウレタン) (PEU)を合成し、これをヨードメタンで処理することにより等間隔に四級アンモニウム基を有するPLLAベースカチオン性アイオノマーを調製した。
イオン基導入量は、仕込みのL-LA/NMDA比(20-80)によって1.2~4.5mol%の範囲で制御した。分子量は原理的には仕込みのNMDA/HMDI比によって制御可能であるが、HMDIが水分に不安定であるため、今回は再現性を重視してNMDA/HMDI比を1.2で固定した。そのため、生成PEUの分子量はL-LA/NMDA比とともに増大し、Mn = 15,000~38,000のポリマーが得られた。これらのPEUを過剰のMeIで処理することにより、全ての三級アミン基が四級アンモニウム基に変化し、アイオノマー(PEU-MeI)が得られたことが確認された。
中性PEUおよびカチオン性アイオノマーPEU-MeIのフィルムを溶液キャスト法により調製し、それらの引っ張り試験による力学特性の評価や、示差走査熱分析による熱的性質を行った。その結果、熱的性質にイオン化による大きな変化は見られなかったが、イオン化により弾性率が向上することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、NMDAを開始剤として用い、L-LAを開環重合することにより、ポリマー鎖中央に三級アミン基を有する両末端水酸基化PLLAを合成した。これを引き続きHMDIで鎖拡張することによりPEUが得られた。PEUを過剰のMeIで処理することにより、PLLAをベースとするカチオン性アイオノマー(PEU-MeI)の合成に成功した。PEUおよびPEU-MeIの生成は1H NMR分析により確認された。イオン基導入量は、計画通り、仕込みのL-LA/NMDA比によって容易に制御された。仕込みのNMDA/HMDI比による分子量の制御も検討する予定であったが、HMDIが水分に不安定であるため、今回は再現性を重視してNMDA/HMDI比を1.2で固定した。
また、得られたPEUおよびPEU-MeIのフィルムを調製し、その熱的性質および機械的性質を評価し、イオン化がそれらの性質に与える影響を明らかにすることができた。
これらの結果から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

四級アンモニウム基は抗菌作用を示すことが知られており、PLLAの生分解を阻害する可能性があるので、これらのアイオノマーの生分解性に興味が持たれる。そこで、これらのアイオノマーのコンポスト分解、加水分解や酵素分解試験を検討し、イオン化前のPEUや通常のPLLAとの分解性の違いを明らかにする。
また、イオン基を導入したことによって親水性が向上することが考えられるので、水との接触角を測定することにより評価する。
三級アミン基含有PEUをイオン化する際にヨードメタンを用いると、必然的に対イオンとしてヨウ化物イオンを有するカチオン性アイオノマーが生成することになる。物性改善の要因がイオン基の凝集に起因するならば、物性が対イオンの種類に依存すると考えられ、特に二価以上の多価対イオンの使用が効果的であろうと予想される。そこで、多価対アニオンを有するアイオノマーの調製を検討する。多価対アニオンを有するアイオノマーの調製には二つのアプローチが考えられる。一つはアミン基含有中性PEUをアイオノマーに変換する際に用いる試薬をヨードメタンから多価体イオンを含有するものに変えることである(path A)。その試薬としては、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、リン酸トリメチルなどの使用を想定している。もう一つのアプローチは、ヨウ化物イオンを対アニオンとするアイオノマーをまず合成し、これを大過剰の目的とする対アニオンの金属塩などで処理することにより対アニオンを交換する方法である(path B)。ヨウ化物イオンを対アニオンとするアイオノマーが既に合成できている状況ではこちらの方が簡便だと思われる。一方、モノマーから合成する場合で比較すると、path Aはpath Bより工程が一つ少ないのでより望ましい。いずれかの方法により異なる対アニオンを有するアイオノマーを調製し、それらの諸性質を評価・比較検討する。

次年度の研究費の使用計画

研究費は、不安定化合物の取り扱いに必要な不活性ガス、原料・材料・溶媒・および触媒などの薬品類、反応容器やシリンジなどの実験器具類の購入に充てる予定である。また、本研究に関連する分野の研究動向の調査や成果発表のための学会・講演会参加旅費にも充てる。
生成物の分析に必要な分析装置のうち、NMR, 元素分析, 及び質量分析は本申請者が所属する広島大学大学院工学研究科物質化学システム専攻応用化学講座共通の装置または広島大学自然科学研究支援センターの装置が利用可能であり、GPC, IR, DSC, TG, 引っ張り試験, 接触角などについては研究室で保有する装置で測定可能である。そのため、設備備品費は計上していない。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] 鉄(III)トリフラート触媒による環状エステルの開環共重合2013

    • 著者名/発表者名
      大森 俊彦・田中 亮・中山 祐正・塩野 毅
    • 学会等名
      日本化学会第93回春季年会
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      20130322-20130325
  • [学会発表] ラクチドとε-カプロラクトンを原料とする熱可塑性エラストマーの合成と性質2012

    • 著者名/発表者名
      中山 祐正・相原 一樹・蔡 正国・塩野 毅
    • 学会等名
      第61回高分子討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 大環状エステルオリゴマーの開環重合による高分子量脂肪族ポリエステルの合成2012

    • 著者名/発表者名
      坂口 圭祐・中山 祐正・蔡 正国・塩野 毅
    • 学会等名
      第61回高分子討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] かさ高いルイスペアを触媒とする環状エステルの開環重合2012

    • 著者名/発表者名
      小坂 俊介・中山 祐正・塩野 毅
    • 学会等名
      第61回高分子討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 鉄(III)トリフラート触媒を用いた環状エステルの開環重合2012

    • 著者名/発表者名
      大森 俊彦・中山 祐正・塩野 毅
    • 学会等名
      第61回高分子討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] ラクチドとε-カプロラクトンを原料とする生分解性熱可塑性エラストマーの設計と合成2012

    • 著者名/発表者名
      中山 祐正・相原 一樹・蔡 正国・塩野 毅
    • 学会等名
      第1回高分子学会グリーンケミストリー研究会シンポジウム
    • 発表場所
      日本大学理工学部駿河台校舎
    • 年月日
      20120823-20120824

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公開日: 2014-07-24  

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