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2013 年度 実施状況報告書

生分解性を有する新規カチオン性アイオノマーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24550136
研究機関広島大学

研究代表者

中山 祐正  広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273576)

研究分担者 白浜 博幸  広島大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (60127660)
キーワードポリ乳酸 / アイオノマー / ポリウレタン / 生分解性高分子
研究概要

前年度までに、主鎖に沿ってほぼ等間隔に三級アミン基を有するポリ(L-乳酸-ウレタン) (PLLAU)を合成し、これをヨードメタンで処理することにより等間隔に四級アンモニウム基を有するカチオン性アイオノマー(PLLAU-MeI)を調製し、イオン基の導入によりポリマー弾性率が大きく向上することを見出してしている。
平成25年度は、イオン基を導入したことによって親水性が向上することが考えられるので、水との接触角を測定することにより評価した。その結果、三級アミン基の含有率の増加に伴って接触角は低下し親水性が向上することが示され、また、三級アミン基を四級アンモニウム基に変換することにより接触角はさらに低下し、さらに親水性が向上したことが確認された。
また、これらのポリマーの生分解性にイオン基が与える影響を明らかにするために、これらのアイオノマーのコンポスト分解試験を、新居浜高専堤主計先生のご協力により実施した。その結果、PLLAU-MeIの分解はPLLAUよりも遅いことが明らかになった。この原因としては、分解を促進すると考えられる塩基性の三級アミン基が中和されたこと、四級アンモニウム塩の抗菌性により微生物の働きが阻害されたことなどが考えられる。
さらに、カチオン性アイオノマーの対アニオンの影響について検討した。PLLAU-MeIを硫酸銀で処理することにより、対アニオンとして硫酸イオンを含むアイオノマー(PLLAU-SO4)を調製した。その結果、対アニオンをヨウ化物イオンから硫酸イオンに変換することにより、ガラス転移温度や弾性率の低下、結晶性や親水性の向上などが見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、PLLAUおよびPLLAU-MeIの分解性や親水性の評価と、対アニオン変換とその物性への影響の調査を行うことができた。コンポスト分解試験の実施に当たっては、新居浜高専堤主計先生にご協力いただいた。得られた研究成果について、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem.誌に論文を投稿し、掲載された。学会発表も随時行ってきた。これらの結果から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

本研究では、ポリ乳酸ベースのカチオン性アイオノマーを合成してきたが、その特徴を明確にするために、対応するアニオン性アイオノマーを合成し、その物性をカチオン性アイオノマーと比較する。アニオン性官能基として、カルボキシ基の導入を想定している。Cooperらは、2,2-bis(hydroxymethyl)butyric acidを開始剤としてラクチドを重合し、ジイソシアナートで鎖拡張することにより、ほぼ等間隔にカルボキシ基を有するポリ(乳酸-ウレタン)を合成している(Cooper, T. R.; Storey, R. F.; Macromolecules 41, 655 (2008).)。同様なポリマーを合成し、適当な金属塩で処理することによりポリ乳酸ベースのアニオン性アイオノマーが得られると考えられる。また、アニオン性アイオノマーとカチオン性アイオノマーを組み合わせたイオン対を調製し、その物性を評価したい。
また、ポリ(ε-カプロラクトン)ベースのカチオン性アイオノマーの合成と性質について、同様に検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、器具類の損耗が予想より少なかったため器具類の購入金額が抑えられたこと、昨年度にまでに購入した試薬が残っていたため薬品類の購入が少なくて済んだことにより、次年度使用額が生じた。
主に実験器具類、薬品類や不活性ガスなどの消耗品の購入に充てる。また、本研究課題は平成26年度が最終年度であり、成果発表のため学会に参加する旅費や、論文発表の投稿費用などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Synthesis and properties of cationic ionomers from poly(ester-urethane)s based on polylactide2013

    • 著者名/発表者名
      Yuushou Nakayama, Takamichi Inaba, Yosuke Toda, Ryo Tanaka, Zhengguo Cai, Takeshi Shiono, Hiroyuki Shirahama, Chikara Tsutsumi
    • 雑誌名

      J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.

      巻: 51 ページ: 4423-4428

    • DOI

      10.1002/pola.26857

    • 査読あり
  • [雑誌論文] イタコン酸とイソソルビドの縮合重合によるポリエステルの合成とその性質2013

    • 著者名/発表者名
      中山 祐正, 坂口 圭祐, 田中 亮, 蔡 正国, 塩野 毅
    • 雑誌名

      高分子論文集

      巻: 70 ページ: 559-564

    • DOI

      10.1295/koron.70.559

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 生分解性を備えた熱可塑性エラストマー2013

    • 著者名/発表者名
      中山祐正、田中亮、塩野毅
    • 雑誌名

      Polyfile

      巻: 50(592) ページ: 28-32

  • [学会発表] カルボキシ基を有するポリ乳酸ベースのポリ(エステルウレタン)の合成とその特性

    • 著者名/発表者名
      大森 俊昴, 田中 亮, 中山 祐正, 塩野 毅, 白浜 博幸
    • 学会等名
      第62回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      京都国際会館
  • [学会発表] ポリ乳酸ベースのアニオン性アイオノマーの合成と性質

    • 著者名/発表者名
      大森 俊昂, 田中 亮, 中山 祐正, 塩野 毅, 白浜 博幸
    • 学会等名
      第2回高分子学会グリーンケミストリー研究会シンポジウム
    • 発表場所
      日本大学駿河台キャンパス
  • [学会発表] イオン基を有するポリ(乳酸―ウレタン)の合成とその性質

    • 著者名/発表者名
      大森 俊昴, 田中 亮, 中山 祐正, 塩野 毅
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス
  • [学会発表] イオン基を有するポリ(乳酸―ウレタン)の合成とその性質の検討

    • 著者名/発表者名
      大森 俊昴, 田中 亮, 中山 祐正, 塩野 毅,白浜博幸
    • 学会等名
      第28回中国四国地区高分子若手研究会
    • 発表場所
      アークホテル岡山
  • [学会発表] Synthesis and properties of polylactide-based poly(ester-urethane)s with ionic groups

    • 著者名/発表者名
      Toshitaka Ohmori, Ryo Tanaka, Yuushou Nakayama, Takeshi Shiono, Hiroyuki Shirahama
    • 学会等名
      2nd Joint Conference on "Renewable Energy and Nanotechnology (JCREN2013)
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス
  • [学会発表] Synthesis and properties of poly(epsilon-caprolactone)-based poly(ester-urethane)s having quaternary ammonium groups

    • 著者名/発表者名
      Yuushou Nakayama, Naoki Matsubara, Ryo Tanaka, Zhengguo Cai, Takeshi Shiono, Hiroyuki Shirahama
    • 学会等名
      2nd Joint Conference on "Renewable Energy and Nanotechnology (JCREN2013)
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス

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公開日: 2015-05-28  

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