研究課題/領域番号 |
24550137
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
氏家 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (40185004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 開環反応 / オキサゾリン環 / アジリジン環 / エポキシ環 / 高分子液晶 / 高分子複合体液晶 |
研究実績の概要 |
本研究では開環反応を利用した多様な高分子材料の合成手法の開拓を行い,構造と機能との関係を明らかにした.研究対象として,オキサゾリン環,アジリジン環およびエポキシ環を用いた.オキサゾリン環はアジリジン環およびエポキシン環に比較して,反応性が低いといった欠点がある.しかし,液晶配向場において配向制御した後に反応が進行・終結するため,配向制御後に高温にて配向を凍結する場合に優位性があることが明らかになった. オキサゾリン環を高分子鎖の側鎖に導入した高分子と高分子骨格主鎖の末端にカルボキシル基を有する高分子液晶(PM-M)との反応によって,ブロック型高分子液晶を得ることに成功した.さらに,このブロック型高分子液晶に,高分子骨格主鎖の末端にカルボキシル基をもつ親水性側鎖を有する高分子を反応させることによって,3種類の高分子が複合された構造をもつブロック型高分子を合成した.これらのブロック型高分子液晶は,PM-Mの液晶性を継承した液晶性を示した.この結果は,オキサゾリン環を利用することによってブロック型高分子を容易に合成できることを示唆している. オキサゾリン環をメソゲン末端に有する側鎖型高分子液晶についても,反応性と配向性について検討した.液晶温度および等方相温度において,オキサゾリン環はカルボキシル基と容易に反応し,それぞれの側鎖型高分子単独では形成しない,新しい液晶相が誘起された.アジリンジン環およびエポキシ環は室温において容易に反応し,温和な条件下での主鎖型高分子液晶(ポリウレタンなど)の合成に有用であった.この開環反応の利用は,高分子やオリゴマーを利用した新しい高分子液晶・高分子複合体液晶の開発に有用であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開環反応を用いることで,反応中間体を任意に合成できること,それらを用いて新しい単一高分子および複合型高分子の合成を比較的容易に行えることが明かになった.例えば,その反応中間体を用いて,主鎖型高分子液晶である両親媒性液晶ポリウレタンを合成した.また,ブロック型高分子液晶の合成にも成功した.最終的に得られる高分子液晶に反応性をもたせることもでき,液晶配向場において,配向の固定化および異なる高分子どうしの接着を比較的容易に行うことができる.以上のように開環反応を利用して,新規の高分子の合成方法を構築し,その成果を応用して新規高分子液晶・高分子複合体液晶の開拓を行っており,目標にあった重要な成果を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果を利用して,異なる機能性高分子の複合化を検討し,新規の高分子液晶システムを開発する.特に,本研究の合成方法は,反応性高分子液晶を合成するのに役立つことから,液晶場での配向制御後に,その構造を固定化・安定化することが必要な配向塗布膜および熱伝導性フィルムの開発などに応用する.具体的には,反応性高分子液晶を液晶状態で配向制御し,均一な液晶配向状態を形成させた後に,加熱によって硬化反応することができるため,あらかじめ反応相手となるモノマーと混合し,必要とする配向状態を形成させ,その後に開環反応を利用して配向の固定化・安定化をするなどの手法の開拓を行い,汎用性を拡張する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ブロック型高分子の新規合成法の確認実験が当初予定より遅れたため,その実験を平成27年度に行う必要が生じた.また,知財確保のために企業との連携を模索したため研究発表を差し控えた.その結果,最新の研究成果を平成27年度に発表することとしたため,平成27年度に使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に成果をまとめるための確認・追加の実験を行うための試薬費に使用するほか,学会発表旅費として使用する.
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