開環反応を利用して,新しい高分子合成について検討した.オキサゾリン骨格を側鎖に有する反応性高分子(P-O)を合成した(Mn=1700,Mw/Mn=1.2).このほかにオキサゾリン骨格との反応性をもつカルボキシ基を高分子鎖の末端にもつ側鎖型高分子を2種類合成した.一つは,オキシエチレン鎖を側鎖に有するポリメタクリレート(P-PEG,Mn=7800,Mw/Mn=1.43)であり,もう一方は,メソゲン側鎖基をもつ高分子液晶(P-Bu,Mn=18100,Mw/Mn=2.33,相転移温度:g 29.6 ℃ SmA 101.1 ℃ N 104.8 ℃ I)である.P-Oに対して,P-PEGとP-Buを1:1や1:2の比率で導入し,ブロック構造をもつ高分子液晶を合成した.この高分子反応によって,ブロック型高分子液晶を比較的容易に得られること,架橋化高分子を含め,さまざまな高分子および化合物の合成が可能になることが明らかになった.オキサゾリン環のほかに,アジリジン環およびエポキシ環の利用についても検討した.オキサゾリン環に比べ,アジリジン環とエポキシ環は反応性が高く,確実に反応を進行させるには有利であった.しかし,加熱状態で配向処理などを行った後に架橋化構造を形成させるには,反応制御のしやすいオキサゾリン環を用いる方が有利であると判断された.オキサゾリン環の開環によって,アミド結合が生成する.このアミド結合は水素結合を形成するため熱的性質や分子の配向挙動に強く影響を与える可能性がある.そのため,水素結合の熱的性質や配向挙動への影響についても調べ,分子設計上の知見として利用した.また,水素結合性高分子液晶(液晶性を示すセルロースウレタンやポリウレタンなど)とオキサゾリン開環化合物との複合化についても検討した.
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