研究実績の概要 |
本研究では申請者が開発したポリチオフェンやポリフルオレンなどの分子量制御法(触媒移動型連鎖縮合重合)を芳香族π共役系高分子からポリフェニレンビニレンやポリアセチレンのような炭素-炭素二重結合を含むπ共役系高分子まで展開することを目的としている。これらのポリマーも触媒移動型連鎖縮合重合によって分子量制御して合成できるようになれば、ポリチオフェンとポリアセチレンとのブロック共重合体のようなこれまでにないπ共役系高分子を創製することができる。今年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)α,ω-ジブロモポリスチルベンへの選択的両末端アリール化 昨年度、4,4'-ジブロモスチルベンの炭素ー炭素二重結合(C=C)に結合しているフェニル基のオルト位にアルコキシ基が導入された基質では、Pd触媒がC=C上を分子内移動し、フェニルボロン酸エステルと反応して選択的に二置換体を与えることを明らかにした。今年度はさらに共役長の長いα,ω-ジブロモポリスチルベンに対してトリルボロン酸エステルを反応させて、同様に選択的にアリール二置換体が生成することを明らかにした。すなわち、C=Cを含む長い共役主鎖上もPd触媒が分子内移動することを明らかにした。 (2)スチルベンモノマーの触媒移動重合 t-Bu3P配位子のAr-Pd-Brでは触媒のAr基がポリスチルベン末端に導入されなかったが、Ar-Pd-Iを用いるとAr基が高分子末端に導入され、触媒移動機構で重合が進行することを明らかにした。これはAr-Pd-IがAr-Pd-Brに比べて、スチルベンモノマーのC=Cによって分解しにくいためと考えられる。
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