研究課題/領域番号 |
24550142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
玉置 信之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00344218)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子機械 / フォトクロミズム / アゾベンゼン / 液晶 / キラリティー / 面性不斉 / ねじり力 |
研究概要 |
本年度は、クランクシャフト効果を示す液晶系についてメカニズムの解明し、液晶分子機械の効率のよいエンジン分子となりうる新規光応答性面性不斉化合物の合成をした。メカニズムの研究においては、光異性化反応におけるねじり力変化が大きいジブロモ型面性不斉アゾベンゼンを用いた時に、trans⇒cis光異性化反応(正)時とcis⇒trans光異性化反応(負)時では、現れる液晶テクスチャーがなぜ異なるのかが問題であった。ひとつの仮説として、正反応では、transアゾベンゼン部位が基板表面に平行に配向した状態から液晶分子との相互作用の弱い球状のcisアゾベンゼンに変化するために、光異性化反応はねじり力の減少とらせん軸の平面内での回転のみを誘起するのに対して、負反応では、配向していないcisアゾベンゼンから急に液晶分子と相互作用するtransアゾベンゼンがランダムな配向で発生するために、液晶のらせん軸の方向が乱されて異なるテクスチャーを与えると考えた。2方向の光異性化反応時におけるアゾベンゼン分子の配向方向を吸収スペクトル測定した結果、同じtrans/cis比を示す光異性化段階において正反応時の方が負反応時よりも液晶中で高い吸光度を示し、負反応時はtransアゾベンゼン分子の配向が乱れていることがわかった。新規化合物の合成については、面性不斉分子の候補として[2.2]パラシクロファン骨格を選定し、アゾベンゼン誘導体を合成した。 パラシクロファンの2つのベンゼンの同じ側に同一構造のアゾベンゼンを導入し、trans-cis体はキラルで鏡像異性体を有すること、面性不斉のon-offを光と熱で誘起されることを見出した。今後は、この化合物の円偏光光異性化反応によって正負両方向の回転をスイッチしうる液晶分子機械のエンジン分子として応用可能であるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、分子クランクシャフト効果が現れている液晶分子機械のメカニズムの解明を目標としたが、それをほぼ予定どおり解明しただけでなく、新規な面性不斉型光応答性キラル添加剤を合成することに成功した。本化合物は、液晶分子機械の回転方向を照射する円偏光の右、左により制御しうることから、本研究においても興味深い化合物である。よって計画以上に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
光エネルギーを最も効率よく仕事に変換する条件を明らかにするために光応答性キラル添加剤の構造と濃度、液晶の種類、液晶膜の厚み、光照射の角度や強度、温度、ガラスロッドの形態を変化させて、光エネルギーに対する仕事の割合を算出する。現在用いているガラス粒子は、直径5ミクロン、長さ約30ミクロンのロッド状のものであるが、それだけでなく薄膜(700nm)ディスク状(直径100ミクロン前後)のガラス粒子なども回転させてみる。次に、新たな面性不斉型光応答性キラル添加剤として、[2.2]パラシクロファンを母体としてアゾベンゼンを導入した化合物を合成し、その光応答性キラル添加剤としての挙動を調べる。これらの化合物もベンゼンの自由回転が制限されているため、ベンゼン環に条件を満足する位置に置換基を導入した化合物はキラルとなり、一方のベンゼン環がアゾベンゼンの一部を担っているとき、光異性化反応によって大きなねじり力の変化が期待できる。すでに、アミノ基を有する[2.2]パラシクロファンを合成し、ニトロソベンゼンと反応させてアゾベンゼン誘導体が得られることを確認している。Rと R’が水素である化合物だけでなく、様々な置換基を導入して誘導体を得る。得られた[2.2]パラシクロファン型アゾベンゼンをキラルカラムで光学分割し、市販のネマティック液晶と混合した時のねじり力及び、光異性化前後におけるねじり力変化、さらにはトランス体からシス体への正方向での光反応とその逆の光反応での非可逆な相テクスチャー変化の可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用額については、平成25年度に実施する計画の内、クロロホルムの購入に充てる。
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