研究実績の概要 |
我々はこれまでに2,2'-ビナフタレンや2,2'-ビアントラセンに二つの認識部位を対称な位置に導入した種々のレセプターを用いて、特徴的なUV-visならびに蛍光スペクトル変化によって対象とするゲストの認識情報を出力可能な種々のレセプターを設計、合成してきた。しかしながら、これまでに合成したレセプターは何れもアリール骨格と認識部位とが対称であった。本研究において、高次な分子認識が可能なレセプターを合成することを目的とした。 昨年度、2-フェニルナフチル基のナフチル基とフェニル基にジピリジルメチルアミンをそれぞれ導入し、さらに亜鉛錯体としたレセプターが対応する2,2'-ビナフタレン誘導体に比べて会合能の向上を見出したが、そのスペクトル変化は小さいものであった。これは、フェニル基回りの対称構造に由来しているためと考えられた。 そこで、フェニル基の2位にシアノ基を導入し、ナフチル基の8位とフェニル基の5位にそれぞれジピリジルメチルアミノ基を導入した化合物を合成した。この亜鉛二核錯体は、フェニル基の軸回りに非対称となるため、ゲスト、特に生体内で重要な二リン酸アニオンの会合に伴う配座固定のためにUV-visスペクトルに大きな変化を観測した。さらに蛍光スペクトルにおいても大きな変化が観測された。また、それらスペクトル変化から測定した会合定数は元となる2,2'-ビナフタレン誘導体に比べて大きかった。これは、二つの認識部位が会合において適切な位置に調整可能であったためであると考えられる。 本研究において、適切に設計した非対称ビアリール誘導体が配座固定によって2,2'-ナフタレン誘導体と同様にUV-visならびに蛍光スペクトルによってその会合が検出可能なセンサーとして有用であることを明らかとした。
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