研究実績の概要 |
近年π電子系化合物は分子エレクトロニクス素子や単一分子デバイスをはじめ、磁気的、光学的機能材料としても注目され、基礎および応用研究が精力的に展開されている。次世代を切り拓く革新的な電子・光・磁気機能を有する物質の創出を図るため、本研究では常磁性内包フラーレンに着目し、その選択的分子変換による構造および電子特性の制御を行う。さらに、得られた常磁性内包フラーレン誘導体の組織化を行い、革新的バルク機能を有する材料の創製を目的とする。 本年度は、前年度で大量合成した常磁性内包フラーレンに対し、1,3-双極子環化付加反応を用いた誘導体合成を行った。導入する置換基としては、金属錯体との超分子形成を指向し、ピリジン配位子の導入を行った。得られた誘導体と金属ポルフィリン誘導体および類縁体との溶液中における相互作用について検討を行ったところ、両者は比較的強く錯形成しており、良好な金属ポルフィリンから内包フラーレンへの光誘起電子移動特性を示すことを明らかにした。これは、常磁性内包フラーレンが有する高い電子受容能と、電子移動後に生成する還元種が非常に安定であることに起因していると考えられる。
|