本研究では高い二光子吸収能の発現を目的に大環状パイ共役分子の開発を目指した。まずフルオレン架橋型環状パイ共役分子の合成と機能評価を行った。160度の結合角を可能とするフルオレンのジヨード体(化合物1)を既知法によって合成した。合成した化合物1とTMSアセチレンをPd(0)触媒を用いたカップリング反応させエチニル基を導入した(化合物2)。化合物2同士を酸化剤を用いてホモカップリングさせ、混合物をゲル濾過HPLCによって分離し、オリゴマーを単離した。オリゴマー同士を再びホモカップリングさせることで環状15量体を合成した。分子量を質量分析により測定し確認した。合成した連鎖体は単量体と比べ吸収波長の長波長シフトと吸収強度の増大が見られたことからパイ共役系の拡張が示された。合成した構造体の二光子吸収断面積をOpen-aperture Z scan 法(5 ns)を用いて測定したところ約10000 GMというフルオレン単体では得られない非常に大きな値が得られた。パイ共役系の拡張の効果に由来すると考えられ、環状パイ共役分子とした優位性が示された。また強い青色蛍光を示すことから二光子蛍光材料として有望であることがわかった。また当初予定していた90度の角度を有するカルバゾールを用いた環状パイ共役分子の開発、およびポルフィリンをスペーサーに用いた環状パイ共役分子の開発と光機能特性の解明にも成功しており、当初の計画通り光機能性環状パイ共役分子システムの構築に成功した。
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