研究課題/領域番号 |
24550153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
錦織 広昌 信州大学, 工学部, 准教授 (00332677)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光燃料電池 / 光触媒 / 酸化チタン / 酸化分解 / 植物性高分子 / でんぷん |
研究概要 |
1. アロフェン修飾酸化チタン光触媒薄膜の作製 吸着能が高いアロフェンと光触媒の酸化チタンを複合化することにより、高吸着能を有し、分解効率の高い光触媒が得られる。まず、高濃度の酸を含むTiアルコキシドのゾル-ゲル反応溶液(酸化チタン前駆体ゾル)に天然の鹿沼土から水簸により分離したアロフェンを混合し、約50℃で超音波照射を行うことによりアロフェンを分散したゾルを作製した。酸の添加と超音波照射はアロフェンのナノ粒子をゾルに高分散させるためである。ガラス基板およびITO電極板上に上記のゾルをコーティングし、500℃で焼成することにより酸化チタンナノ結晶を生成させ、アロフェン-酸化チタン複合光触媒薄膜を得た。アロフェンの混合量の異なる条件で試料を作製した。 2. 触媒の構造観察 作製した試料のSEMおよびTEM観察、XRD測定、IRスペクトル測定を行った。アロフェン粒子は酸化チタンに均一に分散した。アロフェン粒子には酸化チタンの結晶成長を抑制する働きがあったが、酸化チタン粒子の形状への影響は小さかった。 3. 光触媒分解の反応解析 作製したアロフェン-酸化チタン複合触媒を用い、植物廃材などの分解を目標として、酸素溶存下の溶液中における植物性高分子であるでんぷんの光触媒分解実験を行った。IRスペクトル分析により、でんぷんおよび生成物を定性・定量した。さらに、光照射による電流密度を測定した。酸化チタンのTiに対してアロフェンのAlが0.1%の比で複合化した場合は、酸化チタンに比べて光触媒分解効率が高く、光照射時の電流も高い値を示した。アロフェン量がこれ以上増加すると、反応効率は低下した。アロフェンナノ粒子が酸化チタン粒子表面に均一に分散することにより、絶縁性のアロフェンが酸化チタンの半導体特性を低下させることなく、植物性高分子の吸着と分解を促進させ、発電効率を向上させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. アロフェン修飾酸化チタン光触媒薄膜の作製 アロフェン-酸化チタン複合光触媒薄膜試料およびその電極試料の作製法がほぼ確立したため、おおむね計画通りに進展したといえる。 2. 触媒の構造観察 試料の電子顕微鏡観察、XRD分析、分光分析は過去の経験より問題なく行われ、アロフェンおよび酸化チタン粒子の形状を把握することができたため、おおむね計画通りに進展したといえる。 3. 光触媒分解の反応解析 でんぷんの光触媒分解における反応解析および電流測定により、作製した試料の光触媒特性評価を行い、アロフェンと酸化チタンの構造と反応性との関係を明らかにした。これにより反応効率を上げるための条件を得ることができた。これは当初、平成25年度に実施する計画であったことから、計画以上に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行った以下の項目について、確認実験を行うとともに、試料の作製条件を変化させて昨年度に準じた方法で研究を行い、最適な条件を決定する。 1. アロフェン修飾酸化チタン光触媒薄膜の作製 2. 触媒の構造観察 3. 光触媒分解の反応解析
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次年度の研究費の使用計画 |
<物品費> 平成24年度は、試薬類、ガラス基板などの消耗品が当初見積もりより安く購入することができたため、142,070円を次年度に繰り越すこととした。これを平成25年度の物品費300,000と合わせて、さらに研究を進めるために、試薬類、ガラス基板、ランプ、光学部品等の購入に充てる。 <旅費> 当初の計画通り、100,000円を研究成果発表のための学会出張旅費に充てる。 <その他> 当初の計画通り、100,000円を機器使用料、印刷費等に充てる。
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