研究課題/領域番号 |
24550153
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
錦織 広昌 信州大学, 工学部, 准教授 (00332677)
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キーワード | 光燃料電池 / 光触媒 / 酸化チタン / 酸化分解 / 植物性高分子 / グルコース / でんぷん |
研究概要 |
1. アロフェン修飾酸化チタン光触媒薄膜電極の作製 高濃度の酸を含むTiアルコキシドのゾル-ゲル反応溶液(酸化チタン前駆体ゾル)に天然の鹿沼土から水簸により分離したアロフェンを混合し、約50℃で超音波照射を行うことによりアロフェンを分散したゾルを作製した。ITO電極板上に上記のゾルをコーティングし、500℃で焼成することにより酸化チタンナノ結晶を生成させ、アロフェン-酸化チタン複合光触媒薄膜電極を得た。アロフェンの混合量の異なる条件で試料を作製した。 2. 触媒の構造観察 作製した試料のSEMおよびTEM観察、XRD測定、IRスペクトル測定を行った。アロフェン粒子が酸化チタンに均一に分散したことを確認した。 3. 光燃料電池電極上における光触媒分解の反応解析 本研究において合成したアロフェン-酸化チタン複合電極を用い、植物性高分子のモデル化合物であるグルコースおよびでんぷんを燃料物質として、酸素溶存水溶液中におけるの光触媒分解および光電気化学測定を行った。液相中のIRスペクトル分析により、分解生成物の定性・定量を行った。各電極の光電気化学測定を行ったところ、燃料物質を含まない電解液を用いた場合はアロフェンの添加量とともに短絡電流は減少した。全ての電極において、電解液中の燃料物質の濃度増加に伴い光電流密度は増加した。また、このときの短絡電流の値は、0.10%のアロフェンを添加した試料が最も高く、燃料物質の分解速度と二酸化炭素の生成速度に対応する結果であった。アロフェンを混合することにより酸化チタンの光触媒能が阻害される傾向がある。しかし、少量の添加によりチタニアの結晶化を大きく妨げず、チタニアの半導体特性を大きく低下させることなく、吸着分解性能を確実に高めることができた。アロフェンが燃料物質を吸着しチタニア表面に拡散させるため、効率的な酸化分解と電子注入がおこったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. アロフェン修飾酸化チタン光触媒薄膜電極の作製 アロフェン-酸化チタン複合光触媒薄膜電極試料の作製法が確立し、安定した特性を得ることができたため、おおむね計画通りに進展したといえる。 2. 触媒の構造観察 試料の電子顕微鏡観察、XRD分析、分光分析により、アロフェンおよび酸化チタン粒子の形状の確証を得ることができたため、おおむね計画通りに進展したといえる。 3. 光燃料電池電極上における光触媒分解の反応解析 グルコースおよびでんぷんの光触媒分解における反応解析および電流測定により、作製した試料の光触媒特性評価を行い、アロフェンと電極のナノ構造と反応性との関係を明らかにした。これにより反応効率を上げるための確実な条件を得ることができたため、おおむね計画通りに進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
<電極の電気化学測定および詳細な反応解析> 光電気化学測定装置により、作製したアロフェン修飾酸化チタン電極を燃料物質、電解質、溶存酸素を含む溶液に浸漬し、光照射下での電流電圧特性を測定する。燃料物質として植物性高分子のモデル化合物としてでんぷんを用い、この反応はIRスペクトル分析および液体クロマトグラフ質量分析によって生成物を定性・定量することにより調べる。燃料物質は酸化チタン上で生じた正孔またはOHラジカルと溶存酸素によって酸化され、この結果生成したプロトンは還元型電解質により還元された酸素と反応し水を生じると予想される。この機構を実験的に確認する。 光電流値と生成物の定量結果より、電子移動特性・エネルギー変換特性を評価する。酸化チタンの粒子成長・結晶化にともなうナノ構造変化とその結果得られるアロフェンの酸化チタンへの分散性が、燃料物質と酸化チタンとの反応性・電子移動特性、そして電極のエネルギー変換特性に与える影響を明らかにし、最適な電極構造を得る。
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