これまでに、新しい固体燐光材料開発を目的として結晶内の分子配列制御に着目とした強発光性白金錯体結晶の創製に関する研究を行っている。本年度は、これまでの研究から得られている渡環型白金錯体や長鎖アルキル鎖を有する白金錯体における分子配列と発光の関係に関する知見を応用し、新しい常温での燐光発光原理の解明を行った。渡環型白金錯体にハロゲン原子を導入し、結晶構造中における分子間相互作用の誘起が、常温燐光発光の鍵となることを明らかにした。 ハロゲン原子として塩素あるいは臭素で置換されたトランス-ビス(サリチルアルジミナト)白金錯体は、常温で強い結晶発光を示す。単結晶X線構造解析の結果から、低温での強い発光が常温でも維持される結晶には、ハロゲン原子-水素の間に分子間水素結合が観測され、これが3次元状にネットワークを形成していることが明らかとなった。一方、常温では発光性を失ってしまう結晶には、そのような相互作用のネットワークが見られない。ハロゲン原子を介した、水素結合ネットワークの有無が、常温結晶発光の鍵となることが明らかとなった。
|