研究課題/領域番号 |
24550157
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
玉井 伸岳 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (00363135)
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研究分担者 |
松木 均 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40229448)
後藤 優樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (30507455)
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キーワード | リン脂質二分子膜 / コレステロール / 圧力摂動熱量法(PPC) / 高圧密度測定 / 等温圧縮率 / 緩和挙動 |
研究概要 |
当該年度の研究成果は、 1.圧力摂動熱量法(PPC)に関する成果:ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)ベシクル分散液およびコレステロールを含む二成分系DPPCベシクル懸濁液に対してPPC測定を行い、DPPC二分子膜およびDPPC-コレステロール二成分二分子膜の緩和を特徴づける時定数kを実験的に決定できた。また時定数kの温度依存性から活性化エネルギーEaを見積もり、Eaのコレステロール組成依存性を明らかにした。本成果の一部は、国内学会(第64回コロイドおよび界面化学討論会)において発表し、前年度に受理された論文もHigh Pressure Research誌に掲載された(N. Tamai et al., High Press. Res. 33 (2013) 271-277.)。 2.高圧密度測定に関する成果:前年度に構築した、精密測定用の保圧システム(シン・コーポレーション社製)を導入した高圧密度測定装に関して、装置定数の決定や検量線の作成などの予備実験を行なった。また、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)ベシクル懸濁液に対する高圧密度測定にも着手したが、さらに精度を上げる必要があることが判明し、現在装置の改良に取り組んでいる。なお本成果の一部は、本年度(平成26年度)に開催される国際会議(HPBB2014)で発表する予定である。 3.本研究に関連したその他の成果:コレステロールと5種類のジアシルホスファチジルコリン(CnPC)の形成する二成分混合二分子膜の相挙動に関する論文がBiochimica et Biophysica Acta誌に掲載された(N. Tamai et al., Biochim. Biophys. Acta 1828 (2013) 2513-2523.)。本論文は本課題研究を進めるための指針を示す基盤に相当する成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の計画において、当該年度は、前年度の成果を発展させ、成果に直結する結果をあげることを目標として研究計画を作成していた。具体的には、以下の二点が主たる目標である。 1.圧力摂動熱量(PPC)測定による、リン脂質-コレステロール二成分系の緩和挙動の解明 2.高圧力下における精密密度測定による、リン脂質二分子膜の等温圧縮率の決定 1に関しては、当初目標としていたDPPC-コレステロール二成分混合二分子膜の圧力摂動に対する緩和挙動を特徴づける時定数の実験的決定が達成され、また当該年度の実績の概要で記載したとおり、成果の一部を学会で発表できたことから、概ね計画通りに進んでいると考えている。しかし、再現性の確認など十分緻密な研究を遂行できているとは言えず、慢心することなく一層精力的に研究を進めていかねばならないと考えている。2に関しては、本研究費で購入した、精密測定のための保圧装置を導入した高圧密度測定装置を稼働できる状態まで構築できたとは言え、精度面でまだ解決すべき課題があることが判明し、当初予定していたほど進捗していないのが現状である。圧力の保持に関しては十分な安定性が得られたものの、温度制御の安定性が十分得られていないことが原因と考えている。現在、これを解決すべく、2台の装置を並列させることで、温度の不安定性を解消する方法を検討している。このことを踏まえて、より一層積極的に研究を推し進めていかなければならないのはもちろんのこと、それを平成26年度の研究計画に反映させる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」に記載したとおり、平成25年度の研究計画において、PPC測定に関連した研究実施計画(1に相当)については概ね当初の予定通りに進められた一方で、高圧密度測定装置の構築(2に相当)に関しては、当初計画していたほどには進捗していない。そのことを踏まえ次年度以降の計画において、特に2に関連する研究実施計画を計画以上に積極的に進めていくことを考えている。具体的には、 1.PPC測定:当初の計画通り、コレステロールを含む二成分系リン脂質混合二分子膜の緩和挙動の解明を引き続き進めていく。また測定結果の解析方法に関して、市販のソフトウェアを導入して効率改善を図るとともにより複雑な測定結果に対応できるようにする予定である。 2.高圧密度測定:第一に、高精度の結果を再現性よく得られるための改善策を早急に完了させることを最優先の課題とする。完了次第、一成分系のリン脂質二分子膜に対する高圧密度測定に取り掛かり、部分モル体積の圧力依存性から等温圧縮率をいくつかの温度で決定する。さらに当初予定していたコレステロールを含む二成分系リン脂質二分子膜へと発展させ、コレステロールが誘起する相分離状態を体積的な観点から明らかにするとともに、1で決定された緩和時間と組み合わせることで、二成分系リン脂質二分子膜の粘弾性特性の解明を目指す。進捗状況を鑑み、実験条件や測定対象を当初予定していたほどは広げられないと予想されるが、本計画の中心的成果に相当する結果を得られるよう、条件や測定対象を絞り込み、計画を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
参加を予定していた学会が実家近くの会場で開催されたため、旅費が予定していた額よりも少額で済んだことに起因する。 高圧精密密度測定装置の改良にかかる費用として使用する予定。
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