研究課題/領域番号 |
24550161
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小畠 誠也 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00325507)
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キーワード | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 光反応 / 金属ナノ粒子 / プラズモン / ネットワーク / 透過型電子顕微鏡 / 光散乱 |
研究概要 |
本研究では、有機溶媒に可溶であり、高効率な光反応場として利用可能な金属ナノ粒子ネットワークの実現を目指す。平成24年度には、金ナノ粒子を被覆可能な両末端にSH基を有するポリマーの合成を行ったが、分子量分布が若干広くなった(Mw/Mn = 1.2)、ポリマーの1H-NMRスペクトル解析より、異種構造が確認された。連鎖移動剤の改良を行った結果、得られたポリマーの分子量分布が小さくなり(Mw/Mn = 1.1)、異種構造は確認されなかった。得られたポリマーを用いて金ナノ粒子ネットワークを作製し、プラズモン増強フォトクロミック反応の評価を行った。数倍の増強効果が観測されたが、今後厳密な定量的評価が必要である。すなわち、金ナノ粒子近傍での増強効果と粒子ギャップ間での増強効果を考える必要があり、高次電場増強効果における解析が必要である。そこで、粒子ネットワークのモデルをたて、シミュレーション解析の検討を始めている。さらに、金/銀ダブルシェルナノ粒子の作製も開始している。今後、ネットワーク構造における光反応性について厳密な定量的検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においては、連鎖移動剤の改良が必要となり、新たな連鎖移動剤の合成とポリマー作製を主に行った。その結果、論文作成に値する結果が得られており、今後論文投稿を行う予定である。さらに、増強効果における厳密な定量方法を提案しており、シミュレーションとともに、高次電場増強効果について検討する。関連研究の学会発表(14件)および学術論文(5件)で成果を発表し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であり、ネットワーク型金ナノ粒子のフォトクロミック反応の増強効果の厳密な定量的評価を行う。そのためには、反応解析およびシミュレーション解析が必要であり、平成25年度から行っている研究とあわせて考察する。すなわち、単一の金ナノ粒子表面近傍と金ナノ粒子ギャップ間での増強因子を別に扱い、実験結果に合致するようにシミュレーション解析を行うことによりそれぞれの増強因子を決定する。このように、増強電場の空間領域の検討の結果と合わせると、高効率増強反応場を空間的に定量化することができ、本研究の目指す高効率フォトクロミック増強反応場の構築が可能となり、光機能材料設計の大きな指針となる。 さらに、銀ナノ粒子ネットワークや金/銀ダブルシェルネットワークに関する研究を進める。銀ナノ粒子は金ナノ粒子に比べて、短波長領域にプラズモン共鳴吸収を有する。その増強電場効果は金ナノ粒子に比べて大きく、粒子の作製方法が難しく再現性のある合成法が十分確立されていない。合成法の確立とネットワーク構造の作製を進め、フォトクロミック増強反応について議論する。 最終的には、光閉環反応および光開環反応性を評価し、高効率光反応場としての金属ナノ粒子ネットワークの構築を行う。
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