研究課題/領域番号 |
24550165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
今井 喜胤 近畿大学, 理工学部, 講師 (80388496)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蛍光 / 円偏光発光 / 円偏光二色性 / CPL / 超分子 / 有機発光体 / 光学活性 / キラル |
研究概要 |
本研究は、省資源・省エネルギー的手法を用いて、円偏光発光(CPL)特性を有するアミン/カルボン酸系超分子有機発光体の開発を目的としている。アミン分子としてラセミ体のRac-1-phenylethylamine (Rac)-1を、π‐共役拡張型発光性カルボン酸分子として置換基の異なる4-[2-(4-methylphenyl)ethynyl]-benzoic acid (2)、4-[(4-ethylphenyl)ethynyl]benzoic acid (3)及び、4-[(4-propylphenyl)ethynyl]benzoic acid (4)を用い、新しいπ‐共役拡張型光学活性超分子有機発光体の創製を試みた。 まず、(Rac)-1/2系超分子錯体I を、(Rac)-1と2のMeOH混合溶液を調整し、室温で静置する事により、得る事に成功した。この錯体IのX線結晶構造解析を行ったところ、構成分子は、カルボキシル基とアミノ基による水素結合およびイオン結合1次元ネットワークで結ばれており、興味深いことに超分子・錯体化過程で自然分晶を起こし、光学活性な錯体が得られることを見出した。光学特性について検討したところ固体状態円偏光発光(CPL)を観測することに成功した。続いて、(Rac)-1/3系超分子錯体II を、同様に得る事に成功した。興味深いことに、超分子錯体IIも、自然分晶により光学活性な錯体であった。同様に、(Rac)-1/4系超分子錯体IIIにおいても自然分晶していた。いずれの錯体も、2種類の構成分子は水素結合及びイオン結合による一次元ネットワーク構造を形成しており、これらが集合することにより、光学活性な錯体を形成していた。これら錯体II及びIIIの固体CPL特性について検討したところ、いずれの錯体も固体CPL特性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的に、光学活性な機能性材料を創製・開発する場合、光学活性な物質を出発化合物として用いる。しかしながら、光学活性な物質は、一般的に高価であり、安易に入手することが困難な場合が多く、また、得るための光学分割が非常に困難な場合も生じている。そこで、光学活性な化合物ではなく、より安価で、入手しやすいラセミ体の化合物を用いることにより、光学活性な機能性材料を創製・開発することができれば、経済的・省資源・省エネルギー的観点からも、非常に優れている。当該年度の研究成果では、光学活性な物質を出発化合物として用いることなく、ラセミ体の構成分子とアキラルな構成分子を組み合わせることによって、円偏光発光(CPL)特性を有する光学活性な超分子発光材料を創製することに成功したため、評価を②とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、研究計画に沿って、同じキラリティーを有する光学活性な構成分子を用いているにもかかわらず、構成分子の置換基の種類を変えることにより、各種光学特性の符号を制御することを試みる。具体的には、キラリティーを反転させることなく、置換基の位置(オルト位、メタ位、パラ位)あるいは、置換基の種類(ハロゲン基、メチル基、メトキシ基など)を変えることにより、同じ構成分子で、分子配列様式を制御し、固体状態蛍光(PL)特性、固体状態円偏光二色(CD)性、円偏光発光(CPL)特性の制御を試みる。 さらに、超分子錯体からさらに研究を発展させ、単一分子の分子構造を精密に制御することにより、固体状態蛍光(PL)特性、固体状態円偏光二色(CD)性、円偏光発光(CPL)特性の制御を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の予算計画として、実験用試薬などの消耗品を中心に使用する予定である。さらに、研究実施期間の中間年であるため、学会発表など積極的に行う予定である。
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