・最終年度に実施した研究成果 効果的な薬物送達システムを開発するためには、刺激応答型の薬物放出システムが有効であることから、外部刺激に応じてゲストに対する捕捉能が制御できる新規ホストの開発を目指した。本年度は、より速やかなゲスト放出が可能なホストとしてシスチンを連結部位にもつシクロファン2量体を開発した。このホストはクラスター効果に起因してゲストを強く捕捉できること、さらに還元剤の添加により速やかにシクロファン単量体へ解裂しゲストを放出できることがわかった。 ・研究機関全体を通じて実施した研究成果 初年度は、ゲストを強く捕捉するために、クラスター効果の概念を分子設計に取り入れて複数個のシクロファンを集積したホストを開発した。具体的にはクリック反応を利用してシクロファン5量体を効率的に合成することに成功した。さらに、ペプチド合成法を利用してシクロファン2量体から5量体までのホストも合成した。これらシクロファン多量体は単量体と比較してゲスト捕捉能が飛躍的に向上することがわかった。二年目には、外部刺激に応じてゲストに対する捕捉能が制御できる新規ホストとして、分子骨格内にジスルフィド結合を有するアニオン性ホストを開発した。このアニオン性ホストは抗がん剤である DOX などをゲストとして取り込むことができること、さらに還元剤の添加によりシクロファン骨格が解裂しゲストを放出できることがわかった。最終年度は、より速やかなゲスト放出が可能なホストとしてシスチンを連結部位にもつシクロファン2量体を開発した。ゲスト薬剤を強く捕捉でき、刺激に応答して捕捉したゲストを放出できるホストの開発に成功した。本研究によって、効果的な薬物送達システムを開発するうえでの重要な基礎的知見が得られた。
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