研究課題/領域番号 |
24550167
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
田丸 俊一 崇城大学, 工学部, 准教授 (10454951)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機能性高分子 / 界面化学 / 分子集積 / 刺激応答 / 分子センサ |
研究概要 |
新しい高導電性材料や分子メモリなどの開発を指向して、豊富なπ電子系を有するポルフィリン型モノマーが規則的に配置された規則性高分子薄膜の創製に取り組む。すでに、油水界面における重合反応により、規則性高分子膜の創製に成功している。この高分子膜の構造と光化学・電気化学特性を詳細に検討し、電子材料・センサ素子などとしての有用性を評価する。さらに、モノマーの分子設計や重合反応条件を最適化することで、単分子膜厚の規則性二次元高分子の創製法を見出す。この規則性二次元高分子上に任意の分子を規則的に配列させ、物理刺激の長距離伝搬など、その構造的特異性に起因する機能発現を目指す。 規則性高分子膜創成のターゲットとしてポルフィリン分子を採用した。正方形分子であるポルフィリン型モノマーとビオローゲン型モノマー間で、Huisgen 環化反応を利用した油水界面共重合を行ったところ、そのモノマー形状が反映されままμm サイズまで成長した、正方形あるいは長方形の高分子膜の形成に成功した。この膜は100 nm 程度の厚みを持つ。高分解能TEM 観察の結果、輝点が直線状に配列した明確な電子線回折像が観測された。また、TEM 観察像ではπ-π スタッキングの面間隔に相当する約0.35 nm 間隔での繰り返しラインパターンが得られた。以上の結果より、想定した規則性高分子膜が形成し、それが高い規則性を持って積層した結晶性の高分子構造体であることが示唆された。ビオローゲンモノマーをビフェニルモノマーに変更することで、10 nm 程度の膜厚に対して数cm2に至る面積を持つ、極薄の高分子膜の創製にも成功した。この高分子膜は界面反応による製膜後、ポルフィリン部位に定量的に金属を配位できることが確認された。このことよりポルフィン/ビフェニル型の二次元高分子では、製膜後修飾が可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、界面重合反応による高分子膜の創製とモノマー構造と形成する高分子膜との相関関係をある程度明らかにすることができている。結果として得られた高分子膜は効率的な電荷移動錯体が多点で形成していることが示唆されており、これは新しい電子材料としても興味深い。また、得られた高分子膜が規則性の階層構造を強く示唆する実験結果も得られており、これらの膜を製膜後修飾する事にも成功している。以上のように本研究で目指している分子プラットフォームの最初の例としては十分な成果を挙げている。よって、当初平成24年度中に想定していた成果を得るに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに調製した高分子膜は電気化学的に大変興味深い。そこで、これらの酸化還元特性などを評価し、その基本的な物理特性の理解を進めると共に、分子メモリや触媒としての有用性を評価する。さらに、得られた高分子膜の製膜後修飾の可能性を検討し、製膜後にさらなる機能の高度化を図る方法論の確立を目指す。さらに、分子の対称性や剛直性およびモノマー間の電荷移動特性などを考慮した様々なモノマー分子を調製し、これらの界面重合反応から得られる高分子膜の構造を評価することで,規則性高分子膜が形成する条件やその結果得られる膜の機能性に関する詳細な情報を蓄積する。 平成24年度は研究成果を論文誌に掲載することが間に合わなかったので、早急に論文掲載出来る様に作業・研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直積経費は、主に試薬やガラス器具および顕微鏡観察用具などの消耗品の購入に充てる。また15万円程度を目処に、学会参加などの旅費にとして活用する予定である。
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