研究課題/領域番号 |
24550167
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
田丸 俊一 崇城大学, 工学部, 准教授 (10454951)
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キーワード | 機能性高分子 / 界面化学 / 分子集積 / 刺激応答 / 分子センサ |
研究概要 |
新しい高導電性材料や分子メモリなどの開発を指向して、豊富なπ電子系を有するポルフィリン型モノマーが規則的に配置された規則性高分子薄膜の創製に取り組む。すでに、油水界面における重合反応により、規則性高分子膜の創製に成功している。この高分子膜の構造と光化学・電気化学特性を詳細に検討し、電子材料・センサ素子などとしての有用性を評価する。さらに、モノマーの分子設計や重合反応条件を最適化することで、単分子膜厚の規則性二次元高分子の創製法を見出す。この規則性二次元高分子上に任意の分子を規則的に配列させ、物理刺激の長距離伝搬など、その構造的特異性に起因する機能発現を目指す。 昨年度までに、ポルフィリン型モノマーとビオローゲン型モノマーからなる規則性二次元薄膜がポルフィリン-ビオローゲン間の電荷移動錯体形成による積層構造体を形成する事を見出した。これは電気化学的に大変興味深いが、その生産性が悪く詳細な物性を検討するに至っていなかった。今年度は、モノマー構造や触媒等の条件を再検討したところ、比較的生産性の良い実験条件を見出すに至った。また、モノマー分子の対称性と形成する高分子膜の関係について検討し、対称性の合致が製膜に重要であることが示された。 一方、3重螺旋型の一次元ホスト多糖として有用性を示してきたカードランを用いて、共役系高分子の機能制御に成功した。pH応答ユニットを導入した両性カードランとカチオン性のポリチオフェンの複合体により、pHに依存してポリチオフェンの共役状態を制御することが出来た。さらに、カードランの側鎖に分子捕捉部位としてアミロースを導入した、樹状構造を持つ人工分岐多糖の開発し、幹部と枝部に異なる分子を配置した明確な構造を持つ複合材料を作り出すことに成功した。これらの成果は、カードラン誘導体を利用した規則的構造体構築による新規電子材料開発の可能性を示す物である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、電気化学的に興味深いポルフィリン-ビオローゲン規則性二次元薄膜積層構造体の生産性を向上することが出来た。これは、この構造体の特性を詳細に検討する為に極めて重要な進展である。さらに、カードラン誘導体を用いることで、共役系高分子の機能を刺激応答的に制御することに成功した。このように、本研究の目的である規則構造を基盤とした新しい機能性材料構築に対して、一定以上の成果を得るに至っている。加えて新たな分子捕捉部位を導入した新規カードラン誘導体の開発にも成功しており、今後の研究において、様々なπ共役系分子の集積化や共役系高分子を融合させることで、新しい電子材料の開発およびその機能制御の実現が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した規則性二次元膜集積体について、その電気・光化学特性をサイクリックボルタンメトリーや各種分光化学的手法を用いて明らかにし、顕微鏡的手法から得られる構造情報との相関を考察することで、有機電子材料の構築に有効な分子集積化手法についての知見を蓄積する。また、今年度明らかにしてきたカードラン誘導体を活用した共役系高分子の機能制御とπ共役系分子の集積化に関する研究概念を融合させることで、異なる特性を持つ機能分子を明確に配置して新しい複合材料の構築に挑む。これらの研究から得られる知見を元に、更に刺激応答部位を盛り込んだ、更に高度な分子を合成しこの自己組織化挙動について検討する。得られる自己組織体の刺激応答性と電気化学的の相関を調査する。
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