新しい電子材料の設計指針を確立することを目標に、油水界面で特異的に進行する共重合反応を利用して、1)π共役系規則性高分子膜の創成法の確立と、2)得られる規則性高分子膜の構造的特性と機能との相関の解明を行う。これらの研究を通じて、最終的には単分子膜厚の規則性二次元高分子膜の創製と機能創発を目指す。 前年度までに正方形分子であるポルフィリン型モノマーとビオローゲン型モノマー間で、Huisgen環化反応を利用した油水界面共重合を行ったところ、そのモノマー形状が反映されたままマイクロメートルサイズまで成長した、正方形あるいは長方形の高分子膜の形成に成功した。この膜は100 nm程度の厚みを持つ。高分解能TEM観察の結果より、高い規則性を持つ高分子構造体であることが示唆された。 本年度はポルフィン/ビオローゲン型構造体に対する紫外可視吸収スペクトル測定からフリーベースポルフィリンとビオローゲン間の電荷移動(CT)錯体の形成が示唆された。ビオローゲンとのCT形成能を持たない亜鉛ポルフィリンを油溶性モノマーとした実験では、上記の様な明確な形状を持つ高分子構造体は形成しなかった。このことから、ポルフィン/ビオローゲン系で正方形状の構造体が構築した要因としてポルフィリン・ビオローゲン間のCT形成の寄与が示唆された。構造的知見から、CT錯体形成が進行することで、高分子膜形成が規格化され、結果的に正方形状に成長する過程が優先されると考えられる。そこで、ポルフィリンとCT錯体を形成し得る水溶性モノマーとして新たにスチルバゾール型分子を用いた界面重合反応を試みたところ、平行四辺形状の高分子構造体が得られた。この構造体においてもCT錯体の形成が確認された。ビオローゲンに比べてスチルバゾール型モノマーの反応点はずれた位置関係にあることから、形成した高分子構造体の形状の差異は、モノマーの分子形状に強く影響を受けたものと思われる。
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