研究課題/領域番号 |
24550168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
辻井 直人 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90354365)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁性半導体 / 熱電材料 / カルコパイライト |
研究概要 |
本研究では、天然の磁性半導体であるカルコパイライト(CuFeS2)にキャリアドープを行い、熱電特性の向上をはかるとともに、そのメカニズムを様々な物性測定を通して明らかにする。H24年度は、Cu(1-x)Fe(1+x)S2およびZn(x)Cu(1-x)FeS2を、固相反応法によって作成し、熱電特性のキャリア密度依存性を調べた。その結果、x=0.03付近で最も大きなパワーファクターが得られた。ホール係数からキャリア密度を評価し、ゼーベック係数から電子の有効質量を求めた。その結果、伝導電子は自由電子の3~6倍の大きな有効質量を持っていることが明らかになった。この結果は「磁性半導体における強い電子間相互作用によって熱電特性が増大する」という本研究の提案を裏付けるものである。 一方、熱電特性の向上のためには電気抵抗の低減が必要である。このために40 MPaの圧力下での放電プラズマ焼結法(SPS)を行った。その結果、密度が98~99%の高密度試料作製に成功した。この方法に加えてアニールなどの工夫を加えることにより、試料の電気抵抗を2分の1に低減させることに成功した。その結果、Zn0.03Cu0.97FeS2などのサンプルで、400 Kにおいて1 mW/K2mを超える高いパワーファクターを達成した。 より高い性能を得るため、現在、キャリア密度と試料作成条件をより系統的に変化させた試料を作製している。電子状態の微視的情報を得るために、中性子回折とメスバウアー分光のデータ解析も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した、多結晶試料作製、SPSによる高密度試料の作製と、それによるパワーファクターの大幅な向上を達成した。またメスバウアー分光や中性子回折の実験などもすでに行なっており、予定よりも順調に進んでいる部分もある。一方、高温の物性測定や、単結晶の作製については、サンプルは作成ずみであり、またサンプルの高温安定性などのキャラクタリゼーションも完了したため、2013年度前半までに取りかかることができる状況である。従って、全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に、SPS法を用いた試料作成によって高いパワーファクターをもつ試料が得られることがわかったため、本年度は、より系統的にキャリアドープを行った試料の作製と、高温までの物性測定を行い、熱電特性の最適化を行う。さらに中性子回折とメスバウアー分光、磁化測定などの実験結果についてデータ解析を行い、高い熱電特性の起源を明らかにしていく。特に、Feの反強磁性磁気モーメントの大きさや空間分布を明らかにし、ゼーベック係数との関連を考察する。また、実用レベルの熱電特性に達するには熱伝導率を低減させることが必要である。そのためにボールミリングによるナノ構造化とSPS条件の最適化を行なっていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費で、研究に必要な設備はほぼ整備することができたが、世界的なヘリウム供給不足のために、実験に必要な液体ヘリウムを購入することができず、次年度に一部の予算を持ち越すことになった。この分は、H25年度の研究に必要な液体ヘリウムや消耗品の購入に充当したい。
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