研究課題/領域番号 |
24550168
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
辻井 直人 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (90354365)
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キーワード | 熱電材料 / 磁性半導体 / 鉱物 / 出力因子 |
研究概要 |
本研究では天然の磁性半導体であるカルコパイライト(CuFeS2)にキャリアドープを行い、熱電物性を測定し、高い熱電特性達成の指針を得ることを目的としている。 H25年度は試料作成条件を系統的に変化させ、熱電特性の最適化を図った。試料作成条件は、化学組成の変化に加えて、固相反応、放電プラズマ焼結(SPS)、さらにSPS後のアニールなどの作成法で行い、それらの熱電特性の比較を行った。その結果、SPSとアニールを行った試料で最も高い出力因子(パワーファクター)が得られ、300~500 Kの範囲で1 mW/K2mに達することがわかった。さらにSPSによって作成された試料は、固相反応によって作成した試料に比べて高温耐久性が向上することもわかった。化学組成では、Cu(1-x)Fe(1+x)S(2)の組成において、xを増加させるとキャリア(電子)がドープされる。x=0.03付近において、最も高い特性を得た。 CuFeS2においてFeは3価であることがわかっている。一方、Cu(1-x)Fe(1+x)S(2)でxを増加させると、ドープされた余分のFeは、メスバウアー分光の結果、2価に近い状態にあることがわかった。中性子回折の結果からは、余分のFeは磁気モーメントが非常に小さいため、3d電子が遍歴的な性質をもっていると考えられる。従って、CuサイトにドープされたFeの3d軌道が、高い熱電特性に関係している可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルコパイライトをベースにした多結晶試料を作成し、物性測定によって高い熱電特性を観測した。特に、SPS法を用いた試料作成条件を最適化することによって、100%近い密度の試料作成に成功した。またメスバウアー分光や中性子回折の結果をもとに、CuサイトにドープされたFeの3d軌道が重要であると示唆される結果も得た。このように、研究計画に記された「熱電材料としての特性向上」と「メカニズム解明」の両方について、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
「熱電材料としての特性向上」に関しては、高温測定を引き続き行い、パワーファクターの最適条件を見出す。また熱伝導率測定を行い、無次元性能指数ZTを算出する。さらに、ナノ組織化や元素置換により、熱伝導率抑制を行い、ZT向上のための研究を行う。 「メカニズム解明」に関しては、メスバウアー分光と中性子回折結果をより詳細に解析するとともに、理論的解析を加えて、磁性半導体の相互作用と熱電特性の関係を明らかにする。さらにカルコパイライトだけでなく、希薄磁性半導体においても、熱電特性の向上が見られるかを実験的に明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
「物品費」および、論文投稿料や英文校正費など「その他」の費目からの支出が当初の計画より多くなり、それに従って「旅費」の支出を減らしました。その結果、当初の計画よりも、支出が総額で少なくなり、次年度使用額\37,540が生じました。 平成26年度は、前年度に減らした旅費の支出を補うために、次年度使用額\37,540円を主に旅費に使用したいと考えています。
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