研究課題/領域番号 |
24550169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清原 健司 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (30344188)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気化学 / 分子シミュレーション / 熱力学 / 多孔質電極 |
研究概要 |
一定電圧グランドカノニカルアンサンブルのモンテカルロ・シミュレーションを用いて、多孔質電極の蓄電量や圧力などの熱力学的な一般的性質を印加電圧や細孔径の関数として計算した。電解質にはプリミティブ・モデルを用い、電極には表面電荷を持つことができる剛体板を組み合わせて用いた。 多孔質電極に電圧を印加すると、電極表面に誘起電荷が蓄えられるとともにその電極の細孔内にカウンターイオンが充填されるが、このときコイオンも同時に充填されることなど、電圧印加に伴う細孔内のイオンの構造の変化が明らかになった。また、電圧印加に伴って、細孔内には圧力が発生し、これは正にも負にもなり、大きさは大気圧より桁違いに大きくなりうることもわかった。さらに、この圧力は電圧のみならず細孔径の関数として大きく変化し、例えば細孔径がイオン径の十分の一変化するだけで大きく変化することもわかった。 次に、二成分の電解質が扱えるようにシミュレーションのプログラムを開発し、これを用いて、アニオンの径が異なる二成分のプリミティブ・モデルについて、多孔質電極の熱力学的物理量を計算した。蓄電量の電圧依存性などは、一成分の場合とあまり変わらないことがわかった。しかし、細孔内のイオンの構造には、二成分系の特徴が現れた。特に、印加電圧の大きさによって多く充填される成分が異なることなど、イオンの電極への選択的吸着が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、多孔質電極の熱力学的物理量の計算と、これの二成分系への拡張を挙げたが、これらを予定通り進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
多孔質電極の熱力学について、これまではイオンのポテンシャル・モデルとしてプリミティブ・モデルを用いてきた。これにファンデルワールス力を加えたモデルについても計算をし、ファンデルワールス力の効果について明らかにする。また、溶媒を持つ電解質のモデルを立て、溶媒の効果についても議論する。これらの目的のためには、新たにプログラムを開発する必要がある。最終的には、現実の分子に近いモデルを用いた計算を行い、実験との対照をよりしやすくしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入した並列計算機とともに、外部の大型計算機の利用を計画しており、これに予算の一部を使用する。また、研究成果を学会などで発表するための旅費にも予算を当てる。
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