研究課題/領域番号 |
24550169
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清原 健司 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (30344188)
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キーワード | 電気化学 / 分子シミュレーション / 熱力学 / 多孔質電極 |
研究概要 |
一定電圧グランドカノニカルアンサンブルのモンテカルロ・シミュレーションを用いて、多孔質電極における蓄電量、発生圧力、分子構造などを、さまざまなモデルおよび条件において調べた。まずは前年度に引き続き、電解質にはプリミティブモデルを、電極には剛体板を組み合わせたものを用いて、さまざまなイオン径、細孔径、印加電圧に対するイオンや電極の応答を計算した。その結果、電極表面でのイオンの構造や印加電圧に対する蓄電量の振る舞いが近年発表された論文に見られる実験の結果とつじつまが合うことがわかった。特に二成分系におけるキャパシタンスの電圧依存性は、ニ成分系に特徴的な電極表面における分子構造の電圧依存性を反映しているものと考えられる。 さらには、多孔質電極に電圧を印加した際の電解質の熱力学を解析するためのモンテカルロ法のプログラムを、ファンデアワールス相互作用の計算が可能なものに拡張し、テスト計算を重ねた。この拡張により、より現実的なモデルの計算が可能となった。ファンデアワールス相互作用を含むモデルは、電圧を印加しなくても電極表面へ著しく吸着するため、プリミティブモデルの場合とは大きく異なる分子構造を示すことがわかった。特に、多孔質性吸着材によるガス吸着において知られている毛細管現象と同様に、電解質の系についても電極表面とイオンとのファンデアワールス相互作用に起因した細孔内のイオン密度の細孔系依存性が観測され、毛細管現象が多孔質電極の熱力学においても特徴的なものであることが明らかになった。 またこの過程で、プログラムのアルゴリズムを並列計算の効率を上げるなどの改良を行い、計算速度の向上を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ファンデアワールス相互作用の計算が可能なプログラムを開発するに際して、いくつかの技術的な問題が明らかになり、それらを解決するのに予想した以上に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
ファンデアワールス相互作用の計算が可能なプログラムの開発によって、より現実的なモデルを扱うことが可能になった。今年度は、イオン液体などをモデル化し、電極にグラファイトのモデルを用いて、実験との対応がつけやすい条件で多孔質電極の熱力学を解析する。 電解質には一成分および二成分のものを用いて、イオン種に依存する選択的吸着についても調べる。 さらには、溶媒を含む系を計算するプログラムを開発し、溶媒の存在が熱力学に与える影響についても調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
外部の大型計算機の使用料および学会発表のための旅費が当初の予定よりも少なくて済んだ。 初年度に購入した並列計算機へのデータを格納するためのディスクの増設、外部の大型計算機の使用料、学会発表の旅費等に使用する。
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