研究課題/領域番号 |
24550171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
下川部 雅英 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40125323)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NOx-SCR / DME / Ag/Al2O3 / 高機能触媒 |
研究概要 |
我々はこれ迄,DMEを還元剤に用いたNOx選択的還元に用いる触媒の開発に取り組み,本反応に対して高性能な触媒の開発を行ってきた。その結果,Agなど貴金属を担持した触媒の中でAg/Al2O3が活性,N2選択性の点で最も有効であることを見出した。また,反応前のAgの担持状態が孤立型Ag+イオンである1wt% Ag担持Al2O3が中でも最も活性であること,Al2O3担体をGa, In, La, Ceなどで修飾した結果,Ga2O3修飾したAg/Al2O3-Ga2O3では低温度域活性が更に向上することを明らかにしてきた。 本研究では,Ag/Al2O3系触媒をさらに高機能化するため,担体の改良,微量金属成分の添加など調製法の改善によってさらに触媒性能の向上を図り,従来の三元触媒が適用されなかった希薄燃焼排ガスに応用可能で,現行の尿素SCRよりも安全性,操作性などで遙かに優れた特性をもつ新規NOx選択的還元触媒システムの開発を目指す方針である。 具体的には,第一に,この反応に有効であることを明らかにしたAg/Al2O3-Ga2O3の調製法を確立するとともに,触媒の多成分化による触媒機能向上を図るため,Rh, Reなどの貴金属を微量添加したAg/Al2O3を調製し,反応に有効な金属種の探索と最適調製方法について検討する。 第二に,触媒特性に関する知見に基づいて活性点構造を明らかにするとともに,ディーゼルエンジン,リーンバーンエンジンの実排ガスに含まれる反応阻害物質(O2, H2O, SO2)存在下で高性能を発揮できる高機能触媒の開発を目指してその改良を行う。 触媒作用機構,活性点構造,並びに反応ネットワークを総合的に解明し,その中からディーゼルエンジン,リーンバーンエンジンの実用排ガス条件下で,NOのDMEによる接触還元に優れた特性を有するAg/Al2O3系触媒の完成を目指す方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は第一に,DMEによるNO-SCRに有効なAg/Al2O3に用いる担体をGaで修飾したAg/Al2O3-Ga2O3の調製法と触媒特性の関係を検討しその高機能化を目指した。Ga以外の金属も検討したが,Ga添加率が10 mol %のとき活性,N2選択性ともに最高となることを示した。高活性の原因として,GaはAlと同族元素であるため容易に固溶体(GaAlO3)が形成され添加率10 mol%のときに担体の比表面積が最大となり,反応活性種である孤立型Ag+イオンが容易に形成される環境となることを示した。 第二に,触媒の多成分化による触媒機能向上のため,貴金属を微量添加したAg/Al2O3を調製し,有効な金属種とその最適調製法を検討した。Pt, Pd, Re, Rh, Ruを添加した結果,Rh添加触媒はAg単独と比較して200~300℃の低温度域での活性が明らかに向上したが,他の貴金属では全温度域で活性が低下した。Rh添加触媒は低温でのDME転化率が他の貴金属添加触媒より高いためNO還元活性が高かったと結論した。また,活性の促進が認められたRh-Ag/Al2O3において,添加率では 0.15 wt%添加のとき最も高い効果が得られ,添加方法ではAgとRhとの同時含浸が逐次的な含浸よりも有効であることを示した。 以上一端を示したが,初年度はより高活性な触媒開発を目指して研究を行ったが,担体をGaで修飾したAg/Al2O3-Ga2O3並びにRhの微量添加によるAg/Al2O3系触媒の高機能化に関する結果は,2012年9月にリヨン大学(仏)で開催された第7回国際環境触媒会議および2013年1月に北海道大学(函館)で開催された化学工学会北海道支部研究発表会などで注目されており,初年度の研究は当初の計画以上に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は今後も,研究代表者と研究協力者(学部生1名,大学院生2名)の体制で行う。研究の企画,立案,総括を研究代表者が行い,触媒の調製,キャラクタリゼーションとNOの選択的還元に関する反応の解析は研究協力者が担当し,触媒の高性能化に関する問題については全員の協議のなかで解決する。 25年度は,初年度の触媒特性に関する知見に基づいて,1) 担体や触媒成分への修飾により高機能化されたAg/Al2O3系触媒の活性点を明らかにするとともに,2) ディーゼルエンジン,リーンバーンエンジンの実排ガスに含まれる共存ガス並びに反応阻害物質 (O2, H2O, SO2) 存在下で高活性な高性能触媒の開発を目指してその改良を行う。すなわち,反応阻害成分がどのように金属と担体に吸着・相互作用し反応を阻害するかをTPD等を用いて活性点との関連において明らかにし,Ag/Al2O3・Ga2O3およびRh-Ag/Al2O3の金属と担体の状態変化について,粒子径測定,XPS,TEMなどを用いて検討する。また,DMEによるNO-SCRの反応機構を明らかにし,実排ガス条件下での高性能化を目指し触媒の構成成分および調製法,処理方法の改良を行う。 26年度は,それまでに蓄積してきた知見を整理することによってDME-SCRに用いる,高機能化Ag/Al2O3系複合触媒による触媒システムの完成を目指す。すなわち,Rh-Ag/Al2O3およびAg/Al2O3・Ga2O3触媒の調製履歴,構造とNOのDME-SCRにおける反応特性の関係の検討することにより,触媒作用機構および活性点構造を考察し,共存ガスを含めた反応ネットワークを総合的に解明し,その中から希薄燃焼実用排ガス条件下で,本反応に優れた特性を有するAg/Al2O3系触媒の高性能化を目指すとともに,その結果を取り纏め,成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の経費のうち,69,977円が執行残となっている。これは,24年2月6日以降に購入し,3月12日までに納入された消耗品費(64,977円)と3月26日に支払った触媒討論会参加費(5,000円)に該当し,すべて24年度中に使用済みである。したがって,25年度の使用予定はない。
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