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2013 年度 実施状況報告書

炭酸脱水酵素を利用した選択的二酸化炭素捕捉水和触媒の開発と固体炭酸への転換

研究課題

研究課題/領域番号 24550173
研究機関北陸先端科学技術大学院大学

研究代表者

島原 秀登  北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 助教 (40313704)

キーワード炭酸脱水酵素 / 二酸化炭素 / 固体炭酸 / CCS
研究概要

大気又は排出CO2を固体炭酸として貯蔵するCCS技術が注目を浴び,低コストを実現する触媒開発が待望される.しかし安価なCa2+をうまく利用する方法がない.そのような中本研究は,CaCO3を主成分とする貝殻の形成に貝由来Ca2+結合型炭酸脱水酵素(Nacrein)が関与することに着目する.本酵素の性質「低濃度CO2選択的捕捉特異性/高CO2水和触媒能/Ca2+結合能」による貝殻形成に係る仕組みが適切に模倣されれば,CO2を効率的にCaCO3結晶に転換する仕組みを開発することが可能となる.今回高活性酵素変異体と報告者が見出した結晶析出方法を利用して固体炭酸形成反応を高効率化すること,同時にこれまでに明らかとした本酵素の触媒機構から中心的機能を抽出することで,実用性の高い触媒モジュール開発を目的とする研究を行う.Nacreinは炭酸脱水酵素様触媒反応部位(約300残基)とCa2+結合部位(CaB(約100残基))からなるが,本年度,報告者は,大腸菌遺伝子大量発現系を用いて15N安定同位体標識されたCaB(15N-CaB)を取得した.そのNMR測定の結果,シグナルの散らばり具合の低いスペクトルを得られたことから,明らかな2次構造をもたないと考えられた.その一方,Ca2+の有無によって異なるケミカルシフトをもつシグナルが幾つか存在することがわかった.現在、そのシグナルの変化を基に結合に関する情報を抽出する.計算科学的手法を用いた炭酸脱水酵素触媒反応部位モデルの解析では,亜鉛結合水と亜鉛結合ヒドロキシド,イミダゾール基の三態とその回転,そしてそのイミダゾールと他の芳香環との間の相互作用を考慮することによって,2つの芳香環のπ-stacking の影響下そのイミダゾール基の回転が水素結合を引き千切るために必要とされるエネルギーの値を初めて理論的に算出するに至った.これによって,二酸化炭素水和反応に先んじる水の解離によって生成されるプロトンが放出される経路の全貌がさらに露となった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CaBの構造はN字形をもつことが報告されるが,低解像度のため個々の残基が特定されない.ここでは主鎖の二次構造や側鎖の配置に係る知見を得ることが重要である.現段階ではある形を成すことで酸性残基(Asp,Glu)側鎖がCa2+と静電的にうまく相互作用することが可能となる等と推測されるが,その形や相互作用がCaCO3結晶形成抑制に如何に関わるかとの詳細な仕組みを理解することが,装置改良と工業用途等に適した低分子化CaBの開発に必須である.そのような中,分子生物学的手法を用いて構築された大腸菌遺伝子大量発現系に15NH4Cl含有最少培地を適用することで15N標識蛋白質を調製し, 15N/1H相関NMR測定法を用いて得られたスペクトルで観測されるシグナルに基づく予測を行うことができた.そこでは,Ca2+共存下において27残基あるGlyアミドシグナルの相対強度が半分以下に変化しかつ,Ca2+濃度に依存してAsn側鎖シグナルのケミカルシフトに変化が見られた.これは,CaB-Ca2+結合にその酸性基が関わるだけでなくアミド基もまた関わることを示唆している.おそらく,EDTAのような結合様式がそこにあると推測された.また,NMR法によって二酸化炭素水和反応の反応物と生成物を見分ける手法を確立した.一方,酵素やCaBを用いて海水から作成したカルシウム塩の結晶について,その結晶の構成成分(炭酸カルシウムであるか石膏であるか)を分析・特定するために特性X線を利用する手法を確立した.そこでは,同時に走査型電子顕微鏡(SEM)法を本研究に応用する準備を整えることができた.

今後の研究の推進方策

CaBの濃度と炭酸カルシウム結晶の多形形成(ここではカルサイトとアラゴナイト)の間の関係を観察するために,SEM画像を用いた評価系の確立を試みる.そこでは,中空糸繊維を用いてナノバブルCO2溶液作成系の改良を新たに行い,Ca2+濃度及びCO2濃度をイオン電極法によって決定する系を確立する.ここに炭酸脱水酵素を用いて,重炭酸イオンの生成を効率化させている.この手法を細胞培養技術に応用することを検討する.これらによりバイオミメティクス,つまり植物の光合成前段階における炭素源の取込み又は動物の呼吸に係る体液中CO2の運搬・排出,骨/貝殻/卵殻等の固体炭酸の形成といった無機-有機間炭素授受の効率的な仲介を模倣するシステムの構築を行う.また,円偏向二色性(CD)分光装置によってCaBに係る二次構造情報を得る.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Π-stacking Interaction between Heterocyclic Rings in a Reaction Field of Biological System2013

    • 著者名/発表者名
      Muhamad KOYIMATU, Hideto SHIMAHARA, Kimikazu SUGIMORI, Kazutomo. KAWAGUCHI, Hiroaki SAITO, and Hidemi NAGAO
    • 雑誌名

      JPS Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      journals.jps.jp/doi/pdf/10.7566/JPSCP.1.012055

    • 査読あり
  • [学会発表] Chemical Exchange between Two Conformations within His64 in a Mutant of Carbonic Anhydrase Is Sufficiently Slow on the NMR Timescale炭酸脱水酵素のある変異体のHis64の2つの配向の間の化学交換はNMR時間軸上十分遅い2013

    • 著者名/発表者名
      島原 秀登
    • 学会等名
      第 51 回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      京都,国立京都国際会館
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] Theoretical Study of a pi-stacking Interaction Effect to the Orientation of His64 of Carbonic Anhydrase2013

    • 著者名/発表者名
      Muhamad Koyimatu, Hideto Shimahara, Kimikazu Sugimori, Tetsuya Sugimori, Kazutomo Kawaguchi, Hiroaki Saito, Hidemi Nagao
    • 学会等名
      第7回分子科学討論会
    • 発表場所
      京都,京都テルサ(京都府民総合交流プラザ)
    • 年月日
      20130924-20130927
  • [学会発表] 酵素触媒を用いた二酸化炭素捕捉技術の開発2013

    • 著者名/発表者名
      島原秀登
    • 学会等名
      環境科学会2013年会
    • 発表場所
      静岡,静岡県コンベンションアーツセンター「GRANSHiP」
    • 年月日
      20130903-20130904
  • [学会発表] Π-stacking Interaction between Heterocyclic Rings in a Reaction Field of Biological System2013

    • 著者名/発表者名
      Muhamad KOYIMATU, Hideto SHIMAHARA, Kimikazu SUGIMORI, Kazutomo KAWAGUCHI, Hiroaki SAITO, and Hidemi NAGAO
    • 学会等名
      The 12th Asia Pacific Physics Conference (APPC12)
    • 発表場所
      International Conference Halls, Makuhari Messe, Chiba
    • 年月日
      20130714-20130719
  • [学会発表] 二酸化炭素捕捉技術を応用した生育に関する研究

    • 著者名/発表者名
      島原秀登
    • 学会等名
      産学意見交換会
    • 発表場所
      富山,企業会議室
  • [学会発表] 教育活動に関するショートレクチャー-修士学生学内発表会に関する評価メッセージについて-

    • 著者名/発表者名
      島原秀登
    • 学会等名
      第3回若手教員授業研究会
    • 発表場所
      金沢,金沢大学サテライト・プラザ 2階 セミナールーム
  • [学会発表] 理系大学院における留学生に対する教育 -英語による個別指導を中心に-

    • 著者名/発表者名
      島原秀登
    • 学会等名
      大学コンソーシアム石川主催2013年度 第1回FD・SD研修会
    • 発表場所
      金沢,石川県政記念しいのき迎賓館 3 階 セミナールーム A
  • [学会発表] 炭酸脱水酵素を用いた固体炭酸の作成に関する研究

    • 著者名/発表者名
      島原秀登
    • 学会等名
      産学意見交換会
    • 発表場所
      石川,企業会議室

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公開日: 2015-05-28  

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