研究課題
基盤研究(C)
1 チタンの陽極酸化による二酸化チタンの調製と二酸化チタン光電極による水浄化・海水処理チタンを硝酸中で陽極酸化し空気下500℃で1時間熱処理することにより調製したアナターゼ型二酸化チタンを光電極、白金電極を対極として、紫外光照射下(光源:ブラックライト、波長:365 nm、強度:3 mW/cm2)にて水溶液中の難分解性有機物のベラトリルアルコール(3,4-ジメトキシベンジルアルコール)の光酸化プロセスを検討した。二酸化チタン光電極上でのベラトリルアルコールの光酸化の進行度は水溶液中に含まれるアニオン種に強く依存し、過塩素酸イオンや硫酸イオン存在下にくらべ、塩化物イオン存在下では光酸化は迅速に進行した。二酸化チタン光電極上では塩化物イオンの光酸化による塩素の生成が起こり、塩素がベラトリルアルコールの酸化に関与しているものと考えられた。光酸化プロセスにおいてベンゼン環の開裂を示すマレイン酸やギ酸の生成をHPLCにより確認した。チタンをフッ化アンモニウムを含有したシュウ酸水溶液中で陽極酸化し、空気下500℃で1時間熱処理することによりナノポーラス二酸化チタンを作製した。印加電圧によりナノ孔のサイズが異なる電極を調製し、水溶液中のヒドロキノンの光酸化プロセスにおけるナノ孔サイズ依存性を確認した。2 電流パルスおよび電位パルス電解析出による酸化鉄の調製と酸化鉄光電極の可視光応答特性Fe(II)イオンを含有した水溶液中のチタン基板への酸化鉄膜析出を、電流パルスおよび電位パルス法で行った。溶液への窒素吹き込みにより、ナノサイズの酸化鉄粒子の析出が見られた。電位パルスでの析出膜を空気下にて500℃で1時間熱処理することにより、ヘマタイト構造となり、本電極はクエン酸や酒石酸を含む水溶液中にて波長400~450 nmの可視光領域で、光電流量子効率10~20 %を示した。
2: おおむね順調に進展している
1 チタンの陽極酸化による二酸化チタンの調製と二酸化チタン光電極による水浄化・海水処理チタンを硝酸中で陽極酸化し空気下で熱処理して調製した二酸化チタン電極は、ブラックライト光照射により、塩化ナトリウムを含有した水溶液中のベラトリルアルコールの光酸化分解に高い活性を示した。ブラックライトの紫外線強度は太陽光の紫外線強度とほぼ同じであることから、太陽光照射下での二酸化チタン電極による海水中の難分解性有機物の光酸化除去が期待される。二酸化チタン光電極上では一部の塩化物イオンが塩素に光酸化されるので、二酸化チタン光電極と逆浸透膜を組み合すことにより、逆浸透膜への負荷を軽減した海水の淡水化システムの構築が期待できる。本成果は、国際シンポジウム(PRiME 2012、ハワイ)で発表した。また、現在、本成果を基にした論文の投稿準備中である。フッ化アンモニウムを含有したシュウ酸水溶液中でチタンを陽極酸化し、空気下で熱処理して調製したナノポーラス二酸化チタン電極は、ヒドロキノンの光酸化プロセスでのナノ孔サイズ依存性を示しており、現在検討中のベラトリルアルコールや有機酸類の光酸化における応答性の結果を含めて、ナノポーラス構造の反応場としての役割について明らかにすることができるものと期待される。国内学会(第43回中部化学関係学協会支部連合秋季大会、名古屋)で成果を発表した。2 電流パルスおよび電位パルス電解析出による酸化鉄の調製と酸化鉄光電極の可視光応答特性Fe(II)イオンを含有した水溶液中での電流パルスおよび電位パルス電解析出により、酸化鉄膜が再現性良く調製できるようになり、酸化鉄による可視光照射下での有機物の光酸化プロセスの解明と応用への今後の展開の見通しが立った。成果をまとめ、論文投稿の準備を進めている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
1 チタンの陽極酸化により調製した二酸化チタン光電極の水浄化・海水処理への応用 チタンの硝酸水溶液中での陽極酸化およびフッ化アンモニウムを含有したシュウ酸水溶液中で陽極酸化により調製した二酸化チタンを用いて、水溶液中の芳香族化合物や有機酸の光酸化プロセスを明らかにする。ナノポーラス二酸化チタンにおけるナノ孔の光電極反応場としての寄与について明らかにする。水溶液中の有機物の酸化において、二酸化チタン光電極プロセスと溶液処理への応用が期待されるダイヤモンド電極プロセスとを比較し、両者の特徴を明らかにする。二酸化チタン光電極とダイヤモンド電極を組み合わせた水浄化システムの有効性を検討する。2 酸化鉄光電極による有機物の光酸化特性および計測 パルス電解析出により調製した酸化鉄電極を用いて、水溶液中の各種ヒドロキシ酸の可視光照射下での光酸化プロセスを明らかにする。酸化鉄電極上でのヒドロキシ酸の光酸化に伴う光電流応答を解析し、ヒドロキシ酸検出センサーとしての酸化鉄電極の性能を評価する。3 電解還元析出による酸化亜鉛の調製と溶液処理への応用 亜鉛イオンを含む水溶液中にてチタン基板上に電解還元析出を行い、空気下で熱処理することにより酸化亜鉛を調製する。電解還元は定電流、定電位およびパルスで行い、析出形態を比較する。調製した酸化亜鉛を光電極として、水溶液中の有機物(芳香族化合物、有機酸)の光酸化プロセスを明らかにするとともに、二酸化チタン光電極を用いた場合との比較を行う。酸化亜鉛と二酸化チタンとの複合化による効果を、量子効率および亜鉛溶解抑制の観点から明らかにする。
本年度の予算配分額2,800,000円において、執行額は2,717,960円で、82,040円の残額となった。これは、主に旅費として計上した100,000円の執行額が小額となったためである。次年度は物品費300,000円、旅費400,000円として計上しているが、本年度の残額を繰り越して物品費382,040円、旅費400,000円として使用する予定である。
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