研究実績の概要 |
ポリ酸触媒とアパタイト粉体からなるノンハライト粉体に、原料と過酸化水素水をしみこませ、粉体状態のまま静置して、ハロゲンフリーのエポキシ化合物を効率よく合成する環境調和型の粉体系反応(ノンハライト法)を見出した。現在、工業化に向けて検討を進めている。この方法は粉体の表面という特殊な反応場を用いた独創的な技術で、その反応性は、アパタイト粉体の性質・状態によって異なる。 初年度から昨年度までで、市販アパタイト数種を用いて得られた物理化学的データとエポキシ化反応速度を調べ、エポキシ化反応に影響を及ぼす粉体のパラメーターを抽出した。そのパラメーターの一つを変化させた一連のアパタイトを合成して、物理化学的データと、エポキシ化反応に及ぼす効果を調べた。比表面積、粒度分布、動的光散乱粒子径分布など粉体の形状に関するデータや、ICP元素分析、XRD, IR, 固体NMRによりアパタイトの組成や構造を調べた。アパタイト粉体の分散性・凝集性の指標となるゼータ電位の測定、粉体表面の水と有機化合物による濡れ性の測定を行い、液膜形成・流動性に対してアパタイト粉体表面が及ぼす効果を調べた。 当該年度では分析を継続し、得られたデータを総合的に解析して、反応性に影響を及ぼすアパタイト粉体の特性について以下の知見を得た。粉体系エポキシ化反応の促進には、水酸アパタイトよりも炭酸系アパタイトやフッ素化アパタイトなどの化学組成のものが適していること、またアパタイトの結晶性がアパタイト粉体の粒径や粒度分布などの形状より影響することがわかった。エポキシ化を促進するこれら因子は、過酸化水素の分解反応を抑制する傾向があった。このことは反応系内で生成する活性触媒の安定性に関連しておりエポキシ化に有利になると考える。今後は粉体表面での液膜形成や流動性と、反応基質の極性および反応性と対比させて検討し、粉体系反応の理解を深める。
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