研究課題/領域番号 |
24550176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 覚 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00192667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境放射能 / 共存元素 / 微生物影響 / バイオマット |
研究概要 |
広島大学東広島キャンパス内の環境水は毎月、東広島市内の11か所の環境水は2か月に一度サンプリングを行った。このサンプルの全β放射能濃度、核種別γ線測定、ICP発光分析を用いた共存元素の測定、COD測定、BOD測定を行い、環境水中の全β放射能に及ぼす因子について次のことが分かった。 環境水中の全β放射能濃度は水中のK濃度で決定されることはすでに分かっていたが、まず、それを確認することができた。さらに、K濃度とNa濃度の相関をとることにより、二つの相関があることが分かった。二つの相関は、地層などの土壌圏の違いを反映している可能性が示唆された。東広島キャンパス内の環境水のFe濃度、Mn濃度は夏季に低く、冬季に高くなることが観測された。この結果は、夏季の水温が高い時期はバイオマットが活発に活動して水中からFe, Mnが取り込まれ、水中のFe, Mn濃度が下がると説明された。これを確かめるためにモデル実験を行い、バイオマットが存在する場合、Fe濃度は室温では時間とともに下がっていくのに対し、低温では減少はするものの室温ほど大きくは減少しないことがわかり、上記の考えが支持された。 キャンパス内の環境水の全β放射能濃度は夏季に高く、冬季に低くなるように見えたが、その変化は顕著ではなかった。Fe, Mn濃度が下がるとβ放出核種が溶け出すようであるが、もともと全β放射能濃度が低い地点であるため、今後さらに検討する必要がある。COD測定の結果と全β放射能濃度の結果に相関がみられ、有機物量の増加とともにカリウムが溶出しやすくなり、全β放射能濃度が増加することが考えられた。 さらに福島土壌を入手し、土壌中の放射性セシウムの抽出を試みた。酸の効果、水温の効果、共存元素の効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境中の全β放射能濃度が、共存元素、水温、バイオマット、CODと相関があることを示すことができたので、おおむね順調に進展していると判断する。 しかし、BODの調子が安定しなかったため、BODと全β放射能濃度との関係を議論できなかったなどの反省点がある。また、全β放射能と関係する微生物の同定を行うことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の反省点として、BOD測定が安定してできなかったことがあるので、BOD測定を精度よくできるようにし、環境水中の全β放射能濃度とBODとの関係を明らかにする。そのためには、24年度ほど頻度は高くないが、東広島市の環境水及び広島大学東広島キャンパスの環境水のサンプリングを行う。 平成24年度、バイオマットを用いたモデル実験により、バイオマットの活性が全β放射能や共存元素の濃度に影響を及ぼすことが分かったので、その実験を引き続き行って土壌から水圏への放射性核種、共存元素の移行に及ぼすバイオマットの効果を詳細に議論する。9核種混合放射能標準液を用いたモデル実験も行ってバイオマットの効果をさらに詳細に検討する。 16S rDNA遺伝子を用いたDGGE法及びその塩基配列の決定から天然放射性核種の移行に及ぼす微生物の同定を行う。全β放射能濃度はK-40の放射能濃度でほぼ決まるが、K-40の放射能濃度が低いところではPb-214の放射能濃度の寄与も見られる可能性があった。土壌から水圏への移行について、環境放射性核種間で影響を与える共存微生物が異なる可能性があるので、その違いを明らかにする。 福島土壌のサンプリングを行い、土壌から水圏への放射性セシウムの抽出条件の検討を行う。その際に、温度、酸性度、共存元素の効果だけでなく、微生物が影響を及ぼすかどうかを滅菌した場合としない場合で比較を行い、放射性セシウムの除染に関する微生物の影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:50万円以上のものは購入しない。消耗品費として使用する。 旅費:福島でのサンプリングの費用、情報収集、成果発表のために使用する。
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