研究課題/領域番号 |
24550179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
中沖 隆彦 龍谷大学, 理工学部, 教授 (90257824)
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研究分担者 |
石井 大輔 龍谷大学, 理工学部, 助教 (70415074)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生合成 / ポリヒドロキシアルカノエート / グリセリン / バイオディーゼル燃料 |
研究概要 |
脂肪酸メチルエステルであるバイオディーゼル(BDF) は、カーボンニュートラルの観点から環境への負荷が小さく、近年注目を集めている。本研究ではBDF合成時に生じる副生グリセリンの利用法として、PHA生合成の炭素源への利用について検討した。 植物油(大豆油)の加水分解によるBDFとグリセリンの合成:植物油からBDFを得るときは、一般的にアルカリ法で行われることが多いが、後で微生物による生合成を考えるとpHが高くなるのは好ましくないため、まず酵素法で条件を検討した。酵素としてはNovozyme435を用いて、植物油とメタノール混合液に加えて反応させた。まず酵素と植物油をなじませてからメタノールを投入して撹拌を行った。またメタノールを化学量論比で投入すると多量のメタノールのために酵素が失活することから、メタノールを3回に分けて投入することで植物油の大半をBDFに変換することに成功した。次に酵素によるBDF製造の時の最適反応温度についても検討し、室温のときは転換率24.8%と低い値を示したが、60oCのとき95.4%と最も高い値を示した。 リノール酸メチルとグリセリン混合基質での培養:リノール酸は大豆油の主成分であるので代表的なBDFとしてリノール酸メチルエステルを用いて、グリセリンにBDFが少量含まれたときに、PHAの収率を増大させる効果があるかを検討した。グリセリン50mMに対してリノール酸メチルの添加量を変えてPHA生合成を行った結果、得られたPHAはリノール酸メチルを加えるとともに増加し5-10mM加えたところで最大となった。グリセリンとリノール酸メチル単独で培養を行ったときとの比較を行ったところ、いずれの場合も混合基質で培養を行う方がPHA収量は増大し、グリセリンに少量の脂肪酸メチルエステルを添加することの効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトでは、平成24年度に下記の研究計画をを掲げた。 1)W.eutrophaにより、廃油からバイオディーゼル燃料製造時に副生成物として得られるグリセリンを用いてP3HAの生合成を行い、収率60%以上を目指す。 2)P.putidaにより、グリセリンと脂肪酸エステルを炭素源としてさまざまな炭素数の側鎖をもつ共重合体の生合成を行い収率が50%以上になることを目指す。 1)については、植物油を酵素を用いることでグリセリン層のpHを中性付近にとどめて、W.eutrophaを用いてPHA生合成を行った。その結果グリセリンとBDFの最適比率を求め、実際に植物油から酵素法で合成した脂肪酸メチルエステルの培養で約70%という高収率でPHAを生合成することに成功した。 2)については、①の生合成に予定より時間を要したため、数回の生合成を試みたが、収率は40%程度で目標を達成するまでにはいたっていない。今後グリセリンとBDFの混合比率を検討する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、P.putidaによるグリセリンとBDFの混合基質による収率の向上を目指す。グリセリン濃度と混合基質の混合比をファクターとしてスクリーニングを行う。昨年度に引き続き収率が50%を超えることを目標とする。 またW.eutrophaから生合成されるPHAの柔軟性が劣ることからブロック共重合化を行う。すなわちグリセリン/BDF混合基質からPHBを生合成し、続いて奇数鎖脂肪酸を炭素源として加えてHBとHVの共重合ブロックとする。グリセリン/BDFからはPHB連鎖が生成するので結晶性が高く、奇数鎖脂肪酸を炭素源としたブロックはHBとHVの共重合であるため結晶化度が下がり、分子量の制御された結晶-非結晶ブロック共重合体の生合成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に購入した備品、振とう培養機と引張試験機を用いて、消耗品を購入して研究を継続する。全年度繰越金を併せて52753円を炭素源(脂肪酸や植物油)、抽出溶媒などの薬品類に42753円、凍結乾燥冷媒としての液体窒素に100000円を使用予定である。
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