食物油に含まれるトリグリセリドを加水分解して得られるグリセリンを炭素源として、微生物を用いたバイオプラスチックであるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)を高収量で生合成することを目的としたプロジェクト研究を行った。 グリセリンだけを炭素源とすると3つのヒドロキシ基の存在のためP3HAの収量があまり高くないが、グリセリンに対してバイオディーゼル燃料の構成成分の1つであるリノール酸メチルを4:1の比率とした混合基質を微生物Eutrophaを用いて窒素フリーの培養液で生合成を行ったところ、それぞれの基質単体で生合成した時を足し合わせた収量より1.3倍の収量が得られた。このことはグリセリンの代謝において、リノール酸メチルの添加効果があると結論される。 さらに高収量を目指すために、最終年度はグリセリンに対してアミノ酸を添加した培養液を用いてEutrophaによるP3HAの生合成を検討した。まず、アミノ酸は分子構造に窒素を含むためリンフリーの培養液が有効であることを確認した。また、アミノ酸の中でイソロイシンおよびロイシンは単体でも収率が50%近くになり、他のアミノ酸と比較して高い収率となった。そこでグリセリンに対して、これらアミノ酸をそれぞれ混合してP3HAの生合成を行った。その結果、グリセリンに対してイソロイシンを2:1の比率で混合した培養液を用いると収量はリノール酸メチルを用いる時より約4倍となった。さらにロイシンの場合は約8倍の収量が得られ極めて高い収量のP3HAを生合成することに成功した。 以上のことから、グリセリン単体からはP3HAの収量は低いが、アミノ酸であるロイシンを添加することで収量の大幅な改善ができるルートを新しく発見することができた。
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