研究課題/領域番号 |
24550180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平石 知裕 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (20321804)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオベースポリマー |
研究概要 |
地球環境問題と資源有効利用の両面から、バイオマスを原料とし、生物由来である酵素を触媒としたバイオポリマー製造技術の開発が望まれる。我々が最近発見したβペプチド分解酵素(PahZ1)は、反応の可逆性からアスパラギン酸から新奇なポリマーであるβポリアスパラギン酸(β-PAA)を合成できる。一方、細胞表層工学技術は、酵素を細胞表層へ提示することで、細胞を自己増殖可能な全細胞触媒へと変えることができる。そこで本研究では、本酵素を大腸菌表層に提示し、全細胞触媒の有する優れた能力(自己増殖能・細胞毒性回避・酵素安定化等)を利用したβ-PAA 合成法を開発する。さらに、進化工学による酵素の高性能化を行い、本系の高効率化を目指す。 まず、OprI を使用したPahZ1 の大腸菌細胞表層への提示技術の構築を行う。これまでの予備実験の結果、P. aeruginosa 由来のOprI タンパク質をリンカーとした細胞表層工学技術により、バイオポリエステル 分解酵素を活性状態で大腸菌表層に提示できている。また、Revets らもOprI を用いたタンパク質(酵素ではない)の大腸菌表層への提示に成功している(Gene, 1998, 221, 25-34)。これらのことから、OprI を利用する細胞表層工学技術は、種々のタンパク質にも使用可能であることが予想される。従って、目的酵素であるPahZ1 も従来の活性を維持したまま、大腸菌表層へ提示されることが期待され、この点は本研究を遂行する上で最も重要である。そこで本年度は、PahZ1 にもOprI を利用した系を適用し、β-PAA 合成およびPahZ1 の進化工学に使用可能な全細胞触媒の作製を行った。その結果、PahZ1を大腸菌表層へ提示させることに成功し、その局在を免疫蛍光顕微鏡法により確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、細胞表層工学技術によってβペプチド分解酵素(PahZ1)を大腸菌表面に提示した全細胞触媒を作製し、PahZ1 の進化工学による高性能化を計るとともに、全細胞触媒によるβ-PAA 合成反応を行うことを目標としている。 本年度は、P. aeruginosa のOprI タンパク質をリンカーとしたPahZ1の大腸菌表層への提示技術の構築を目的とした。OprIタンパク質の末端にPahZ1が連結するように融合タンパク質をデザインし、その融合タンパク質遺伝子を発現プラスミドに導入し、DNAシークエンシングにより目的とする発現プラスミドの構築を確認した。次いで、PahZ1の発現条件を検討し、最適発現条件を決定した。さらに、PahZ1の局在部位を調べるため、免疫蛍光顕微鏡法を行った。その結果、PahZ1は当初の設計通りに大腸菌表層へ効率よく提示されていることが分かった。 このように平成25年度以降に実施予定である「ハイスループットなPahZ1 の進化工学システムの構築」に使用可能な細胞表層工学技術を構築できたことから、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において「OprI を使用したPahZ1 の大腸菌細胞表層への提示技術の構築」が達成できた。そこで今後の研究推進方策として、当初の計画通り「ハイスループットなPahZ1の進化工学システムの構築」を実施した後、「高性能化PahZ1を提示した全細胞触媒の創成」を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請研究25年度では、高性能化した変異酵素のハイスループットな選抜手法の一部としてPCR を用いた突然変異導入・部位特異的飽和変異導入・DNA 再構築反応を行うため、使用に最適と考えられるスペックを有するサーマルサイクラーは必需品であることから、その購入費用を設備備品費として計上した。一方、消耗品については、本研究の性質上、DNA 修飾酵素などの比較的高額な生化学試薬が必要となるうえ、使い捨てのプラスチック器具を多用することになる。さらに、多数の変異体クローンの塩基配列解析が必須であることから、遺伝子解析に関する生化学試薬および消耗部品が必要であり、その費用を消耗品費として計上した。この他、成果発表の旅費や論文投稿費を計上している。 また、平成24年度において研究が順調に進んだ結果、実験における「トライ&エラー」の回数が予想よりも少なく済んだため、次年度使用額が発生した。平成25年度では「トライ&エラー」を数多く行う進化工学を実施することから、発生した次年度使用額を本実験に使用する生化学試薬等の消耗品費として計上した。
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