研究実績の概要 |
本研究では、1~2nmの細孔(ゼオライト(例:0.5nm)とメソポーラスシリカ(2~50nm)の間の領域)を有するスーパーマイクロポーラスシリカを鋳型として、ナノサイズの金属酸化物を合成し、その機能性について調査した。様々な物質を試した結果、下記事項(①~③)に関して有用性を見出した。①1~2nm領域の細孔を鋳型としてCr酸化物を合成すると、六価のCr種が優先的に生成した。一般に、六価のCr種は酸化剤として機能するが、通常加熱条件下では不安定である。今回作製した六価のCr種は熱安定性を有していた。その特徴を生かし、室温~中温側では酸化剤として、高温側では触媒として機能させると同時に高温条件下で六価への再酸化が起こることを利用して、室温(25℃)から高温領域(400℃)まで連続的にVOC分解が可能な環境浄化技術に応用した。②金属酸化物を用いたVOC分解用触媒ではCe,Co等の異種元素の複合によって、活性が向上することが知られている。今回、Ce,Co種を中心にシリカの壁の中や孔の中にそれら酸化物を導入し、VOC分解活性を調べたが、大幅な活性向上にはつながらなかった。粒子同士をナノスケールで効率よく接合できなかった可能性がある。しかしながら、シリカ細孔壁に異種元素を導入することで、細孔径を維持しつつ細孔の比表面積のみ増加する傾向が観測された。③はじめにシリカ細孔内に導入したWO3を触媒として水熱合成条件下でTiO2をWO3上に導入する手法によって複合したTi-W系複合ナノ酸化物は、その光触媒活性(エタノール分解)が、細孔内にWO3及びTiO2を単独で導入した場合やバルクを用いた時の活性に比べて、大幅に向上した。
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