マルチヘムタンパク質である硫酸還元菌由来のシトクロムc3の部位特異的変位導入により特定のヘム近傍の環境を変化させる。これにより、元来有している電子伝達機能に加え新機能を付与することができるといえる。これまでに、Shewanella oneidennsisを用いた異種発現系を構築し、シトクロムc3の部位特的変異導入により、ヘム近傍のアミノ酸置換を行い、特定のヘム欠損シトクロムc3の調製を行った。また、ヘム周辺のアミノ酸置換により新規機能として、ペルオキシダーゼ活性を付与したシトクロムc3の調製に成功した。さらに、これらの変異シトクロムc3は元来有している電子伝達能を有していることが明らかとなった。これらのことから、マルチヘムタンパク質を用いれば、従来有している機能に加え新規な機能を付与できることがわかった。さらに、高効率光水素発生系の構築のため、ベシクルを反応場として用いた反応系を構築し、均一系の光水素発生に比べ効率よく遂行することを明らかにした。特にベシクルの表面電荷を調製することで、電子伝達体の所在を調節すること示し、電子伝達体の局在が光水素発生反応へ与える影響について検討した。その結果、ベシクルへ電子伝達体を局在させると、逆電子移動反応の進行が速くなり、光還元速度は低下するものの、水素発生効率が向上するという結果がえられた。これは、光水素発生反応に必要なすべての成分がベシクル中に共存することにより、順方向の電子伝達効率が向上し、最終的な水素発生効率の向上につながったことを示している。
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