研究課題/領域番号 |
24550186
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山吉 麻子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (70380532)
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研究分担者 |
村上 章 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (60210001)
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キーワード | microRNA / アンチセンス核酸 / ペプチド / RISC |
研究概要 |
microRNAの発現異常は様々な疾患の原因となることが知られている。microRNAは、RISC (RNA-induced silencing complex) と呼ばれるリボヌクレオプロテインとなった後、標的遺伝子を捕捉しその発現を制御する。本申請課題では、microRNA の標的鎖捕捉機構を狙い撃つ新規核酸素子の開発を目的とした。 本年度は、RISCからmicroRNAを解離させるペプチドコンジュゲート核酸(RINDA) の分子設計の最適化、microRNA解離能の評価、レポーター遺伝子を用いた迅速アッセイ系によるRISC機能阻害効果の評価を行った。Glu の連続配列 (EEE) を持つRINDA (E3)は、ペプチドを持たないオリゴ核酸(ASO)と比較し、RISCからのmicroRNA解離能ならびに生細胞中におけるRISC機能阻害効果が顕著に向上することが明らかとなった。一方、Lysの連続配列を有するRINDA(K3)-as のRISC機能阻害効果はASOより低下することが確認された。RISCにはmicroRNAの5'末端を保持する塩基性ポケットが存在することが知られているが、そのポケットとRINDAのペプチド配列との相互作用がRISCの機能を阻害する上で重要であると考えられる。今後、ガン細胞亢進性のmicroRNAを標的としたRINDA を種々設計し、その効果を網羅的に評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は開発したRINDA-OligoがRISCからどの程度microRNAを解離することが可能であるかを定量評価する実験系の構築に成功し、RINDAのペプチド配列について概ねの最適化が完了した。また、生細胞中におけるRINDA-Oligo のRISC機能阻害効果についても評価することが出来た。RINDA-Oligoを用いることで、細胞内でのRISC 機能阻害を行えるだけでなく、その後の作用機序解析まで達成出来るものと確信している。よって、当初の研究計画通り、本研究課題の最終的な目的を実行するために十分な研究成果と知見を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ガン細胞亢進性 microRNA に対する RINDA-Oligo の機能評価 前年度、レポーター遺伝子を用いて分子構造の最適化された RINDA-Oligo の標的を、ガン細胞で高発現している microRNA (onco-miR) へ移行し、核酸医薬としての有効性を評価する。標的 onco-miR としては、ガン細胞で高発現していることが報告されているmiR-21およびmiR-10b、miR-133を選択する。対象としてヒト乳ガン細胞、ヒト子宮頸ガン細胞、ヒト白血病細胞を用い、合成したRINDA-Oligo の効果を評価する。コントロール分子と比較して、RINDA-Oligo がどの様な効果を発揮するかを、WST-1アッセイを用いた細胞増殖率評価、Migration Assay を用いた細胞遊走能評価を中心に検討する。可能であれば、担癌マウスを作成し、RINDA-Oligo を導入したガン細胞の造腫瘍性を検討し、in vivoでの有効性まで評価したい。 (2) RINDA-Oligo の分子構造のさらなる最適化 ガン細胞および実験動物を用いて得られた結果を、RINDA-Oligo のデザインに繰り返しフィードバックし、分子構造のさらなる最適化を行う。
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