研究実績の概要 |
グアニン(G)を豊富に含みGGGTTAの繰り返し配列から成るヒトテロメア鎖はin vitroでK+やNa+存在下においてG四重鎖を形成することが知られていて、2013年にはBalasubramanianらによって生細胞中での存在も示唆された。ヒトテロメア3’末端ではTTAGGGの繰り返しが150塩基以上続くため、理論的にはどの位置でもG四重鎖を形成しうるが、実際にどの位置で優先的に形成されるかは明確でない。また、このような比較的長鎖のヒトテロメア鎖が形成するG四重鎖の構造多様性についてもほとんど知られていない。 我々は各種分光学的手法によってGGG配列を6つ含むヒトテロメア鎖のK+存在下でのG四重鎖形成に関する研究をおこなった。まず観測対象として蛍光標識単鎖DNA(3’-FAM-TAGGG(TTAGGG)5TT-TAMRA-5’, 37htel)と、その一部のGをイノシン(I)に置換した単鎖DNAを合成した。GGGの中心のGをIに置き換えたGIG連続配列はG四重鎖形成の構成要員でなくなるため、形成しうるG四重鎖の種類を減らすことができる。これを利用してそれぞれ主に1つのG四重鎖を形成するように設計した5種類のG-I置換ヒトテロメア配列と37htelを熱力学的に解析することによって、比較的長鎖のヒトテロメア鎖のK+存在下における構造と安定性を明らかにした。それに加えて、流体力学半径の変化を一分子レベルで観測することにより得た37htelのG四重鎖形成過程に関する知見も得られたので学会に報告した。
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