研究課題/領域番号 |
24550189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松尾 貴史 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50432521)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カスパーゼ / アポトーシス / 有機小分子 / 活性化 / 速度論 |
研究概要 |
PAC-1はアポトーシス誘導有機小分子として知られており、カスパーゼ3の活性化過程における金属イオンの影響をPAC-1が持つキレート能により除去すると考えられている。しかし、我々の予備的実験においては、弱酸性条件でのPAC-1の金属イオンキレート能は小さく、カスパーゼ活性化過程には別メカニズムの存在が示唆された。そこで、本年度は、野生型カスパーゼ3の活性に対するPAC-1の効果を酵素反応速度論に基づき解析した。その結果、pH=6.0付近の弱酸性条件で、Km値の低下およびkcat値の増加が観測された。このことは、PAC-1が基質結合および触媒過程の段階に有利になるように酵素のコンフォメーションを変化させていることを示唆している。また、PAC-1と酵素を混合させ、CDスペクトルを測定したところ、弱いながらもPAC-1の吸収バンド付近に誘起CDシグナルが観測された。これは、酵素とPAC-1が直接相互作用していることを支持するものであり、金属イオンのキレート除去以外のメカニズムの可能性を示すものである。さらに、PAC-1の効果は、酸化防止剤として添加する2-メルカプトエタノールの存在下では弱くなる傾向が見られた。そこで、窒素雰囲気下で、2-メルカプトエタノールフリーの酵素を調製し、嫌気条件下で、酵素活性に対する2-メルカプトエタノールの濃度効果を検討したところ、触媒活性は2-メルカプトエタノールの濃度に対して飽和することが分かった。このことは、2-メルカプトエタノールはシステインチオールの酸化抑制のみならず、リガンドとして機能し酵素のコンフォメーションに影響を与えていることが分かった。 また、変異体酵素(変異体プロカスパーゼ3)の作成についても検討を行ったが、発現した酵素の抽出、精製がスムーズには行えないことが判明し、条件検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変異体酵素の発現、抽出、精製に時間がかかっており、条件検討が完了していないため。なお、野生型酵素に対する速度論的検討は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
変異体酵素の発現、抽出、精製に関して、発現プラスミドの変更により大量発現を検討する。変異体酵素を得たのちに、野生型酵素に対する実験と同様の方法で反応速度論的実験を行う。また、これと並行して、同位体標識PAC-1の合成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異体酵素の発現に手間取っているために、カラム精製条件検討のための小スケールカラムの購入を行っておらず、未使用額が生じた。プラスミド変更により発現が確認されたのちに、小スケールカラムの購入を実施する。また、同位体標識PAC-1の合成のための試薬購入、結晶化条件キットの購入を予定している。
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