研究課題
PAC-1はアポトーシス誘導有機小分子として知られている。昨年度、野生型カスパーゼ3の活性に対するPAC-1の効果を検討したところ、Km値の低下、kcat値の増大が観測され、従来提唱されている金属イオンの除去機構以外の、タンパク質と直接相互作用の可能性が示唆された。本年度は、このことを詳細に検討するために、PAC-1の濃度を変化させながら、反応初速度への影響を調べたところ、反応速度の依存性は、ミカエリスメンテン型の挙動を示し、見かけの解離定数は、52 nM程度と求められた。非常に強い結合と考えられた。しかし、弱い誘起CDシグナル、吸収スペクトル変化が小さいことから、プロトマー間の疎水的空間に結合しているのではなく、活性部位付近に作用しているという作業仮説を立てた。このことを基に、ドッキングシミュレーションで、最適な結合モデルを検討したが、活性部位付近にPAC-1と強く相互作用できるようなアミノ酸残基はなく、やはり、プロトマー間の空間への結合が強く示唆された。CD、吸収スペクトル変化が小さいかったのは、この空間に芳香環を持ったアミノ酸残基が少ないためと考えられる。また、PAC-1の有無に関わらず、カスパーゼ3は、homo-heterodimeric dimerの構造を維持していることもわかった。したがって、活性変化は、全体構造を維持したまま、局所的な構造再配列によって、もたらされていることが明らかとなった。また、変異体酵素(変異体プロカスパーゼ3)の作成について、タンパク質発現は確認でき、精製可能な条件を見出すことができたが、得られたタンパク質量が十分でないことから、DNA配列の再検討をすすめている
3: やや遅れている
変異体酵素に対するPAC-1の効果の検討について、最終結果が得られていない。
変異体酵素に対するPAC-1の影響について、反応速度論的検討を速やかに行う。また、ドッキングシミュレーションの結果を基に、PAC-1の結合に関与しない部分にリンカーを介してがん細胞表面に過剰発現しているレセプターに認識される小分子もしくは抗体を導入し、がん細胞選択的アポトーシスを検討する。
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Inorg. Chem.
巻: 53 ページ: 1091-1099
10.1021/ic402625s
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http://mswebs.naist.jp/LABs/hirota/tmatsuo/matsuo_jpn.html