研究課題
ジオールデヒドラターゼ (DD)はアデノシルコバラミン由来の酵素であり、1,2-ジオールを相当するアルデヒドへと変換する反応を触媒する。虎谷らはSite-Directed Mutagenesisにより変異型酵素を作成し、それらの活性を測定した。変異型では水酸基転移反応の活性化エネルギーの低下に寄与するHis143とGlu170を置換したHis143Ala、Glu170Gln、Glu170Alaの活性を求めた。His143AlaとGlu170Gln変異型の活性はそれぞれ野生型の5.1%と0.02%となり、Glu170Ala変異型では活性はほとんどなかった(<0.01%)。今回、計算ミューテーションを用いてアミノ酸残基の役割および活性に与える影響について検討した。変異導入により水酸基転移反応の活性化エネルギーが大きく上昇していることが判明した。野生型では水酸基転移反応においてC-O結合がヘテロリティックに切れることにより電子の非局在化がおき、遷移状態が安定化する。一方、His143Ala変異型ではこの結合がホモリィテックに開裂し、ラジカルが転移する水酸基に局在することが判った。また、Glu170Gln、Glu170Ala変異型では水素を引き抜く残基が存在せず、共鳴安定化が確認されなかった。これらの結果から、His143はとGlu170による相乗効果により遷移状態が安定化することが明らかになった。また、律速段階の活性化エネルギーから計算された酵素の相対活性は実験により得られた相対活性をよく再現しており、酵素反応の解析だけでなく、設計に応用することも期待させる結果となった。
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