研究課題/領域番号 |
24550194
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
稲津 敏行 東海大学, 工学部, 教授 (70151579)
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キーワード | 糖鎖転移反応 / Endo-M / シュガーリングタグ / 糖鎖修飾 / 3-デオキシ-N-アセチルグルコサミン / 化学酵素合成 |
研究概要 |
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-M)を用いる糖鎖転移反応を工学的に応用できるレベルへ到達させることを目的に、本年度は、糖鎖受容体必須構造である1,3-ジオール構造由来の小分子型新規シュガーリングタグの創出を目指すと共に、未解決な課題であるN-アセチルグルコサミン3位水酸基の影響を明確にするサブテーマに注力した。 1)1,3-ジオールタグ(新規シュガーリングタグ)として、チオール型タグ、および、アルキン型タグの合成を開始した。アルキン型タグは、既に合成しているアジド型タグと一対となり、クリック反応に利用されることを想定している。いずれも、既に合成したアジド型、アミン型タグと同様に、リンゴ酸誘導体から合成している。 2)糖鎖転移反応機構解明の1つとしてN-アセチルグルコサミンの3位水酸基をデオキシ化した誘導体を用いる反応に興味が持たれる。そこで、3-デオキシ-N-アセチルグルコサミンの合成を行った。報告例が一例あるものの低収率であったため、その改善を図った。その結果、従来法を超える合成ルートを確立することが出来、現在、酵素反応基質への誘導を行っている。 当初計画よりは、やや遅れを生じているが、派生的に3-デオキシ-N-アセチルグルコサミンの新規合成ルートを確立できるなど、成果は挙がってきている。これらの結果を総合的に利用し、小分子シュガーリングタグを用いる糖鎖修飾法の開発を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ほぼ計画通りに進展している。不十分であった点は、3-デオキシ-N-アセチルグルコサミンの合成が予想以上に困難を極めた点である。この影響でチオール型、アルキン型シュガーリングタグの創出に遅れが出ている。しかし、3-デオキシ-N-アセチルグルコサミン誘導体を基質とする糖鎖転移反応を行える準備は進んでおり、その結果次第では、より効率的な新規シュガーリングタグの設計・合成が可能になろう。こうした結果から本研究は若干の遅れを伴うものの、ほぼ予期した内容で最終年度を迎えることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の研究進捗は、遅れた部分があるものの、新たに展開できている部分もある。これらの結果を反映し、次のサブテーマに注力する。 1)3-デオキシ-N-アセチルグルコサミン誘導体を基質とする糖鎖転移反応を行う。3位水酸基の存在が有効であると明らかになった場合には、3位水酸基を有するタイプのタグを設計し、その合成を開始する。 2)新規シュガーリングタグとして、チオール型、アルキン型タグを完成させる。これにより、アミン型、アジド型、チオール型、アルキン型、カルボキシル型の5種類をそろえる。 3)側鎖にアジド基を有するアミノ酸、あるいは、三重結合を有するアミノ酸を用いたペ プチド合成を行う。得られたアジド型あるいはアルキン型ペプチドと対応するシュガーリングタグとをクリック反応させる。得られた修飾ペプチドを用いEndo-Mによる糖鎖転移反応を行う。一方、それぞれのタグに予め糖鎖転移を行い、得られるN-グリカンタグを用いた糖鎖ペプチドの合成を行う。この合成戦略は従来とは全く逆の関係になり、本シュガーリングタグ法の汎用性の拡大に繋がるものと期待できる。 併せて、これまでの結果の発信に重点を置く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
サブテーマの一つ(3-デオキシ糖の合成)に予想以上に時間とマンパワーをとられたため、他の合成計画に若干の遅れが生じている。その遅れた合成に多数の試薬類や有機溶媒類を使用することを想定しているため。 大きなハードルを越えたので、一気に目的に向かって研究進展が期待できる。従って、種々の試薬類や溶剤類、汎用理科機器類の購入の頻度が上がるため、計画通りに研究を進めることで、当初予定額が必要となる。
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