研究実績の概要 |
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-M)を用いる糖鎖転移反応を工学的に応用できるレベルに到達させることを目標に最終年度は、糖鎖受容体必須構造である1,3-ジオール構造を有する小分子型新規シュガーリングタグをライブラリー化することを中心に行った。 1)D-リンゴ酸を出発原料に、7種類の小分子型新規シュガーリングタグを取りそろえることにほぼ成功した。このうち、2種類は収率の向上など課題が残った。2)モデルとして、抗インフルエンザ薬であるAmantadineと抗酸化剤であるビタミンEを用い、実際に小分子型新規シュガーリングタグを用い、薬物の修飾反応を行った。3)糖鎖転移反応の限界の一つは、糖鎖受容体の溶解性に難がある場合である。そこで、本反応の応用範囲の拡張を目指し、包摂化合物による溶解性の向上により、この課題の改善に取り組んだ。まだ、予備的ではあるが、糖鎖転移反応が進行することがわかり、今後の研究に意義のある波及的な成果を上げることができた。4)波及的に、バイオリアクターによる糖鎖転移反応を開発することに成功した。 研究期間全体を通じ、最大の目的である小分子型“シュガーリングタグ”のライブラリー化を果たすことができた。この修飾法を用いれば、様々な薬物に糖ではないタグを介して、糖鎖導入ができる為、応用範囲が格段に広げることができるため、工学的な価値が高い成果である。3-デオキシGlcNAcの合成法や溶解性に低い糖鎖受容体の改善策、あるいは、バイオリアクターの創出など様々な波及的成果もあげることができた。しかし、そのために、主となる研究の速度がやや遅くなったことは否めず、直接的な論文発表もやや遅れ、現在執筆中となった。 今後は、この方法論の応用を行うとともに、波及的な成果の利用により、本酵素反応の工学的な展開を続ける予定である。
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