研究課題/領域番号 |
24550195
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
渡邊 総一郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (10287550)
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研究分担者 |
岸本 利彦 東邦大学, 理学部, 准教授 (90339200)
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キーワード | 生体機能関連化学 / タンパク質の単離精製 / 光分解 / クリックケミストリー |
研究概要 |
タンパク質の効率的かつ高感度な単離精製法を確立するために、ビーズ表面を光分解基を含む有機分子で化学修飾し、光反応により先端部分がビーズから脱離する系の開発を引き続きおこなった。昨年度、ビーズ表面に光分解基を介して色素分子を導入したモデルビーズでの定性的な検討をおこなったことを受けて、本年度は光反応効率を定量的に調べた。 まず、光分解基の反応効率を評価するために、ビーズを用いない検討をおこなった。光分解基に蛍光色素を結合した分子に紫外光を照射して、高速液体クロマトグラフィーにより光分解反応の経時変化を追跡した。365 nm光照射により、原料は減少し、色素分子が放出されることを確認した。30分程度の光照射により原料は完全に分解することが分かったが、色素の放出量は、他のピークとの重なりにより、精密に測定することができなかった。 ビーズとして、バイオ研究者にとってハンドリングが容易な磁気ビーズ(Dynabeads)を用い、その表面修飾の効率を、ビーズ表面に結合させる蛍光色素の反応洗液中の濃度(反応しなかった色素量)を用いて評価した。これと並行して、ビーズ表面への色素吸着量をフローサイトメーターによる測定で評価した。蛍光色素の定量から、反応させる色素量が増えるほど吸着量も増加するが、非特異的な吸着量も増加することが分かった。フローサイトメーターによる測定では評価が難しく、両者の測定結果を併せて評価するには、用いる蛍光色素の量に制限があることが明らかとなった。非特異的吸着量を抑える必要があること、および、実質的にビーズ表面に照射される光量を確保すること等は重要で、今後はDynabeads以外のビーズも検討の候補にすべきと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度は、(1)紫外線照射によるビーズ表面に結合した分子の放出(定量的検討)、(2)ビーズ表面でのクリックケミストリー、(3)アビジンービオチンのペアを標的タンパク質とそのリガンドと見立てたモデル実験、の3項目について検討することを目標としていた。 (1)についての検討をおこない、ビーズを用いない実験で、光分解基が期待される機能をもつことを示すことができた。しかし、ビーズ表面での結合形成/結合切断の評価は非特異的に吸着した分子との区別も含めて評価が難しいことが分かってきた。この問題を解決するために、ビーズの表面修飾および光分解反応の条件検討を進めることを優先しておこなった。そのため、当初予定していた(2)と(3)の検討に着手するには至らなかったが、優先順位の高い検討事項を集中して進めることができた。 上記の事情から予定していた3項目の検討事項のうち2項目が先送りとなったため、「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、先送りとなった(1)ビーズ表面でのクリックケミストリー、(2)アビジン―ビオチンのペアを標的タンパク質とそのリガンドと見立てたモデル実験について検討をおこなう。 ビーズを用いた評価で検討の余地があることから、Dynabeads以外のビーズを用いた検討をおこなう。その際、光分解基で表面修飾された市販のビーズを利用することも考慮する。これは、表面修飾のための光分解基を含む有機化合物の合成段階を省略することで、時間的なメリットが得られると考えるためである。表面修飾の効率や非特異的な吸着の問題、光反応の効率などを主眼に置いた検討により、研究を効率的に進めたいと考えている。 市販のビーズを用いる場合、末端がアミノ基となっているため、それに合わせて、表面修飾のための分子の分子設計も修正する必要がある。ただし、それに適した化合物(あるいは、それに類似の化合物)の報告例があることから、分子設計を修正した後の目的化合物の合成経路確立には、それほど困難を伴わないと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
大きな計画の変更はなく、小額の次年度使用額が生じた。これは次年度に消耗品代として活用する。 引き続き有機合成と固相合成用の消耗品、実験器具の購入が主となる。新たに、光分解基で表面修飾されたビーズを購入予定である。海外の試薬会社から輸入するが、\60,000/5 g 程度で購入できる見込である。
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