昨年度に引き続き、本研究で目指す技術要素を確立するための検討をおこなった。昨年度まで利用していた磁気ビーズ(Dynabeads)では、非特異的なタンパク質の吸着や蛍光によるタンパク質定量に困難を伴うことが分かったきたため、他のビーズの検討が必要と考えた。本年度は光分解基があらかじめ導入されている市販のビーズを用い、表面をビオチンで修飾したのちに、蛍光標識ストレプトアビジンと混合した。蛍光顕微鏡でビーズ表面を観察したところ、蛍光の増大が見られ、その蛍光強度は光照射により減少した。この蛍光強度の変化は、表面をキャッピングしたコントロールビーズでの結果と比較して有意と考えられた。蛍光標識ストレプトアビジンの吸着量や光照射による溶出量の定量が今後の課題である。 クリックケミストリーを用いて、ビーズ表面に(タンパク質を結合した)リガンド分子を導入するためのモデル実験として、末端アルキンをもつ光分解基とアジドを導入したビオチンとのクリックケミストリーをおこなった。モデル反応の条件検討によりクリックケミストリーが進行する条件を見出したので、その生成物を用いて、光反応性を調べるために紫外光照射をおこなった。光分解反応は進行しているが、その生成物は予想した化合物と一致しなかった。生成物が光照射により分解する可能性や、共存する化合物と反応する可能性を調べたが、反応に大きな影響を与えるほどの変化は確認できなかった。反応の経過を調べるためにNMR管中で光照射をおこない、NMRスペクトルによって反応を追跡したところ、光照射に伴って出現する新たなシグナルを確認した。光分解のプロセスで生じると考えられるこれらのシグナルは、時間とともに消失することが明らかとなった。この中間体の構造について検討中である。
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