研究概要 |
既に過酸化水素と迅速に反応し酸化活性種を与える小分子金属錯体に着目し、プロ蛍光団AmplexRedを分子内に有する単核鉄錯体(MBFh1)を設計、合成している(Y. Hitomi, T. Takeyasu, T. Funabiki, and M. Kodera, "Detection of Enzymatically Generated Hydrogen Peroxide by Metal-Based Fluorescent Probe", Analytical Chemistry, 2011, 83 (24), pp 9213–9216.)。本年度は、MBFh1を用いて細胞内外の過酸化水素の検出を試みた。その結果、MBFh1は細胞培養条件において、MBFh1のアミド部位が自発的な加水分解を受け、過酸化水素非存在下においても赤色蛍光を与えることが判明した。そのため、アミド結合を持たない新たな単核鉄錯体MBFh2を設計、合成した。現在までにMBFh2の合成と基礎的な解析を終えている。MBFh2はMBFh1と同様、秒単位で過酸化水素と反応し、赤色蛍光を与えること、また、細胞培養条件においても十分に安定であることを確認している。HeLa細胞、A431細胞に対して、MBFh2を添加した結果、顕著な細胞毒性は認められなかった。MBFh2は細胞透過性を有しており、MBFh2をHeLa細胞あるいはA431細胞に添加後、外部から過酸化水素の添加に対し、細胞内に赤色蛍光の増大が観測された。また、上皮成長因子の添加によっても、A431細胞内に赤色蛍光の増大を観測することができた。以上、本年度は研究計画どおり、細胞実験に用いることが可能な高感度の過酸化水素蛍光プローブの開発に成功した。
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