研究課題/領域番号 |
24550197
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 准教授 (20335186)
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キーワード | 過酸化水素 / 鉄錯体 / 蛍光プローブ / 細胞 |
研究概要 |
細胞が成長因子による刺激によって過酸化水素をシグナル伝達物質として生成することが分かっているが,シグナル伝達物質として生産される過酸化水素の濃度,拡散過程は明らかにされていない.本申請者は,シグナル伝達物質として生産される過酸化水素の時空間イメージングを目指し,高感度過酸化水素蛍光プローブの開発を行ってきた.既に,昨年度にO-アルキル化レゾルフィンをプロ蛍光団として,鉄錯体を過酸化水素との反応点として有する過酸化水素蛍光プローブMBFh2を開発し,細胞内でMBFh2と過酸化水素との反応から生成する赤色蛍光色素を利用して細胞内の過酸化水素を検出するために様々な条件を検討し,10 μMのMBFh2を用いた場合に上皮成長因子刺激によってA431細胞が生産する過酸化水素を細胞内で赤色蛍光を用いて観察できることを見出している.本年度は,過酸化水素のマルチカラーイメージングを目指し,緑色の蛍光色素を用いる高感度過酸化水素蛍光プローブの開発を行い,過酸化水素の細胞内の過酸化水素を緑色蛍光を用いて観察することに成功した。この結果は,異なる場所に存在する過酸化水素のマルチカラーイメージングを可能にするだけでなく,我々のプローブ設計の一般性の高さを示すものである。本研究の成果は,本論文として報告した(Development of Green-Emitting Iron Complex-Based Fluorescent Probes for Intracellular Hydrogen Peroxide Imaging,Bull. Chem. Soc. Jpn. 10.1246/bcsj.20140055)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内で使用できる過酸化水素蛍光プローブのレパートリーを増やすことに成功し,本アプローチの一般性の高さを実証することができた。また同時に,過酸化水素のマルチカラーイメージングに1歩近づくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
情報伝達物質としての過酸化水素の役割を明らかにするには,蛍光プローブの局在化が課題となる。今後は,本研究で開発した蛍光プローブをもとに細胞膜や細胞内小器官に局在化できる新たな過酸化水素蛍光プローブを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
様々な波長を有する過酸化水素蛍光プローブの合成法を確立できたために、2年次はプローブ合成に集中した。そのため、細胞染色実験を3年次にまとめて行った方が効率が良いと判断した。 細胞染色実験に必要なA431細胞や上皮成長因子、蛍光プローブの波長にあった蛍光顕微鏡のダイクロイックミラーを購入し、効率良く、合成したプローブの機能評価を行う。また、上皮細胞成長因子が発生する過酸化水素の拡散過程を可視化できる新たな蛍光プローブ、および、細胞膜や細胞内小器官に局在化できる新たな過酸化水素蛍光プローブを開発する。
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