研究課題/領域番号 |
24550198
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
野村 章子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (40443006)
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キーワード | DNA / 蛋白質 / ペプチド |
研究概要 |
DNAのメチル化はCpG配列上のシトシンに多く存在し、塩基配列の変化を伴わずに遺伝子機能を制御するエピジェネティクス機構であり、細胞の発生、分化の制御や細胞の老化や癌化に密接に関連している。DNAメチル化・非メチル化のパターンは細胞分裂のサイクルを通してDNA複製時にも忠実に継承・維持されているが、メチル化維持機構の詳細は完全には解明されておらず、DNA複製時における片鎖のみがメチル化された非対称な“ヘミメチル化”二本鎖DNAの生成から消失挙動の解明はエピジェネティクス研究に重要な知見を与えると考えられる。本研究は、ヘミメチル化DNAをターゲットとし、これを認識する人工蛋白質・ペプチドを作製し、ヘミメチル化DNAの検出技術を開発することを目的とする。 前年度は分子モデリング計算を用いてヘミメチル化CpG配列を認識するアミノ酸を設計し、得られたペプチドが天然型と同様にフォールディング構造を形成することを確認した。 H25年度は得られたペプチドを用いてDNAとの相互作用を検討した。フリップアウトしたメチルシトシン塩基との相互作用、あるいは、フリップアウトによって生じたスペースへの挿入と二重鎖DNAの塩基との相互作用を狙い、疎水性アミノ酸残基を導入したペプチドを作製した。ゲルシフト実験によりペプチドとDNAとの親和性を評価した結果、疎水性アミノ酸残基を有するペプチドはメチルシトシンとシトシンを識別することが示された。さらに、メチルシトシンとの親和性は分子モデリング計算による分子設計から予測されたように、疎水性アミノ酸残基側鎖のサイズと形状に依存することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度は、前年度の分子設計を基にペプチドを作製し、DNAとの相互作用を検討した。得られた結果を分子設計にフィードバックして、人工蛋白質・ペプチドの再設計、およびDNAとの相互作用解析を行い、おおむね当初の研究計画通りに進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は主として、前年度から得たペプチドとDNAとの相互作用を検討した。H26年度はH25年度の結果をフィードバックして人工蛋白質・ペプチドの機能向上を行う。具体的には、1) DNA親和性の向上、2) DNAに配列特異的に結合するドメインを利用したヘミメチル化CG周辺配列に対する特異性の付与、を検討する。さらに、これらの人工タンパク質・ペプチドを細胞に導入し、ヘミメチル化DNAの検出方法の開発とその応用展開を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は実験から得られた結果を分子設計にフィードバックして、人工蛋白質・ペプチドの再設計を行ったが、新しい知見が得られたため当該部分の研究実施計画を延長して次年度(H26年度)も引き続き再設計と改良を行っていくこととした。これらの人工蛋白質・ペプチドの特性を定量的かつ正確に比較・評価するためには、まとめて同時に実施することが要求される実験があるため、これは次年度にまとめて評価することとし、分子設計の改良および評価に使用予定であった未使用金額を来年度の当該実験に使用する。 上述した人工蛋白質・ペプチドの改良・評価実験をはじめとして、実験で使用する消耗品代および共同利用機器の利用料への使用を計画している。消耗品としては、試薬、ガラスおよびプラスチック器具等が上げられるが、特に、メチル化等の修飾DNA、ペプチド合成用のアミノ酸、蛍光プローブ等のライフサイエンス関連の試薬類は高価なため、本研究費を使用したい。また、得られた研究成果の学術誌への投稿費用、および国内外の学会発表に要する費用にも使用する。
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