研究課題/領域番号 |
24550204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 裕之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10399537)
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研究分担者 |
松田 真生 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80376649)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ単結晶 / ナノワイヤ / ナノ電解法 / 有機導電体 / 電解結晶成長 |
研究概要 |
本年度は,①材料設計・合成,②ナノ単結晶形成条件の検討,③電子・磁気・光機能評価について実験を行った。 ①材料設計・合成:本年度は基準物質となるジシアノコバルト(III)フタロシアニンを合成した。シアン化カリウムとの反応でジシアノコバルト(III)フタロシアニンのカリウム塩を得た。これと有機カチオンとの複分解でジシアノ金属フタロシアニンの有機カチオン塩を得た。その他材料については市販品を調達し用いた。 ②ナノ単結晶形成条件の検討:電子デバイス特性評価については,電界効果トランジスタ構造で評価を行った。シリコン基板上に電極を2つ作製し,そのギャップは5μmであった。光機能デバイスについては,太陽電池を構成するため,ITO基板を用いた。それぞれのデバイス構造へのナノ単結晶の作製条件を検討した。電界効果トランジスタ構造にはリチウムおよびナトリウムフタロシアニンを材料に用い,ナノ電解セルを用い交流による電解を試みた。振幅電圧や周波数等の最適化により,最終的に上記基板上の2つの電極の間にナノ単結晶を橋渡し形成させることに成功した。一方,太陽電池デバイスにおいては,コバルトフタロシアニンを用い,直流で電解を行った。電位や成長時間の最適化により,最終的に基板上へ均質なナノ単結晶膜を作製することに成功した。双方のデバイスともに得られたナノ単結晶は走査型電子顕微鏡(SEM)によって成長様式を確認し,透過型電子顕微鏡(TEM)によって構造を確認した。 ③電子・磁気・光機能評価:リチウム,およびナトリウムフタロシアニンナノ単結晶について,電界効果特性を測定したところ,電場に依存する特性が得られた。また,コバルトフタロシアニンナノ単結晶薄膜については,SPMによる電流電圧特性測定を行った。また,光照射下での電流-電圧特性測定からは光電効果が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子機能デバイス,光機能デバイスともにナノ単結晶の作製条件の最適化により,デバイスの作製に成功している。電子機能デバイスではリチウムフタロシアニン,ナトリウムフタロシアニンと2種の材料系で電場による応答が観測され,今後につながる成果が得られた。磁気デバイスについても,これまでに電子機能デバイスで得られた条件を基にデバイス構造の作製が可能となる見込みである。一方,光機能デバイスにおいても光電効果が見出され,こちらでも今後につながる成果を得ることが出来た。以上から,研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①材料設計・合成 前年度で得られた手掛かりを基に,新たな有機金属錯体を設計し、合成を行う。基本的には、配位子には電子機能を持たせるため、広がったπ電子系を有するもの、中心金属には磁気機能を持たせるためにスピンを持つ金属元素を用いる。 ②デバイス作製に適したナノ単結晶形成条件の検討 本年度も引き続きナノ単結晶の配向・配列制御を目指す。ナノ単結晶の集合状態での機能発現を目指し、周期的・規則的に配置、配向させるための電解条件、電極構造を検討する。また,印刷法による電極作製なども導入し,大気中での作製プロセスとして応用面でも検討を行う。 ③デバイスの電子・磁気・光特性評価 電子・磁気機能デバイスにおいては、配置・配向や大きさと物性との相関を検討し、微小化由来の効果などを検討する。電子デバイスでは電界効果測定を行う。磁気デバイスでは強磁場中での物性評価も行い、局在スピンがデバイスに与える効果を検討する。光機能デバイスについては、光電変換あるいは光スイッチング素子構造を作製し機能評価を行う。これらのデバイス評価には、プローブ顕微鏡(SPM)による物性評価なども採り入れ、多方面から物性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めて行く上で必要に応じ,適切に研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額は異なるが,研究計画には変更はなく,前年度の研究費も含め,当初の予定通り計画を進める。 ①主要な装置・設備の購入:すべて現有のもの活用して研究を進めるため、特になし。 ②消耗品費:前年度同様,ナノ単結晶の原料となる種々の材料を合成するため、試薬、ガラス器具類を購入する。電極形成用のレジスト材料等と、シリコン、ITOなどの基板を購入する。印刷法による基板上への電極作製も行うため,電極材インクも調達予定である。ナノ電解法および、電気化学特性評価のためのセルなどの器具類を作製・購入する。電子特性測定のための計測器、及びパーツ類を購入する。測定機器の改造のため加工を行う。低温での電子物性測定のための寒剤を購入する。 ③旅費その他の経費:旅費は、研究分担者との共同実験、打ち合わせ、及び共同利用研究機関での共同実験、並びに学会・研究会等における研究動向調査、研究成果の学会発表(日本化学会、応用物理学会など)に用いる。また、その他の経費として研究成果を論文投稿するための費用を計上した。
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