最終年度である本年度は,研究計画調書における②ナノ単結晶形成条件の検討,③電子・磁気・光機能評価を中心に実験・検討を行った。 ②ナノ単結晶形成条件の検討:新たに有機ドナー,有機アクセプタ分子を用いてナノ単結晶の作製を試みたところ,テトラチアフルバレン(TTF),テトラメチルテトラセレナフルバレン(TMTSF),テトラシアノキノジメタン(TCNQ)においてナノ材料の作製に成功した。TTF,TMTSFにおいてはこれまでのナノ単結晶と同様の形態であり,透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた制限視野電子線回折から,これらのナノ単結晶の構造を明らかにした。一方,TCNQはナノファイバー状の形態であり,制限視野電子線回折からも明確な回折ピークは得られなかった。いずれの材料においても電解条件を最適化し,電極間への選択形成を実現した。これによって,2端子デバイスとして特性測定を可能とした。一方,光機能デバイスについては,前年度に光照射による結晶成長の可能性が見出され,本年度現象の再現性を確認する一方,電子特性測定に向けたサンプル作製を行った。光照射のみで電荷移動錯体結晶が得られることから,低環境負荷なデバイス材料作製法として今後発展が期待される結果を得た。 ③電子・磁気・光機能評価:上記TTF,TMTSFナノ単結晶について,電界効果特性を測定したところ,期待される特性とは逆の効果が得られた。結晶中に含まれる対イオンに欠損や配向の乱れがあることから,これが何らかの影響を及ぼしている可能性も考えられる。また,TCNQナノファイバーにおいてはスイッチング特性が見られ,簡便な手法でナノスケールスイッチングデバイスの作製が実現出来た。また,光機能デバイスについては,光照射で得られた微小結晶について電子特性を測定したところ,良好な導電性を示すことが明らかとなり,今後のデバイス応用の上で重要な結果が得られた。
|