研究課題/領域番号 |
24550205
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
武田 圭生 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70352060)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 一次元金属錯体 / 圧力インジケータ / 圧力センサ / 高圧力 / 粉末X線回折 / 薄膜 / 真空蒸着 / 吸収スペクトル |
研究概要 |
金属イオンが一次元的に配列する金属-ジオンジオキシマート錯体は加圧すると色彩変化や電気抵抗の急減など極めて興味深い性質を示す。加圧による色彩変化は、色から圧力を決める圧力スケールとして使用できる。また、電気抵抗の急激な変化は圧力センサとして利用できる。混晶薄膜を用いると利用圧力領域を自由に設定できるので高圧下においてNi,Pd及びPt錯体を組み合わせた混晶薄膜の電子物性を詳細に研究し、新しい高圧力センサ材料の開発を目的としている。 初年度は金属-ジオンジオキシマート錯体混晶薄膜の作成方法について詳細に研究した。混合比1:1の混晶薄膜については既に作成しているが、これは一つの蒸着源から二種類の錯体を蒸着するという方法で作成したものである。この方法では二種類の錯体の昇華温度が異なると均一な混晶比で蒸着膜を作製できない。そこで高真空蒸着装置を改良し蒸着源を二元化した。この装置を用いて、蒸着速度の比を混晶比として金属-ジメチルグリオキシマート錯体の混晶薄膜を作製した。混合比1:1で作製した薄膜の吸収スペクトルは従来法で作製した薄膜とほぼ一致していた。これは二種類の昇華温度が近いためであると思われる。しかし、従来法と比較すると蒸着速度を調整する時間がかかるため薄膜作製に必要な試料の量が倍になってしまった。これは蒸着方法を最適化することにより改善できると考えられる。今年度はさらに高圧下における混晶体のX線回折の研究を行った。加圧による電子スペクトルや色彩変化を理解するために結晶構造の研究は重要であり、X線回折の研究は不可欠である。軌道放射光を使用して高圧下における金属-ジオンジオキシマート錯体混晶体の粉末X線回折を行い、結晶構造の圧力変化を詳細に研究した。大気圧下から10GPaまで加圧し、この圧力範囲内では構造相転移などの大きな異常が起こっていないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画では金属-ジオンジオキシマート錯体の合成、金属-ジオンジオキシマート錯体混晶薄膜の作成および混晶薄膜の基板依存性の三テーマについて行う予定であった。これらの内、合成と薄膜の作製の二テーマについて着手することができた。特に薄膜の作製に必要な高真空蒸着装置の改良を行うことができたので、薄膜の作成方法の研究が大きく進展した。次年度の研究計画になっていた高圧下における混晶体のX線回折の研究を前倒しして行ったので、今年度行う予定であった混晶薄膜の基板依存性については次年度の課題とした。さらに、高圧下における薄膜の電子スペクトルの研究についても今年度から開始して、その成果を日本物理学会や応用物理学会などに発表した。以上のことからおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究を基に加圧による色彩変化や吸収スペクトルなど主に光学的な物性に焦点を当てて研究を推進する。金属-ジオンジオキシマート混晶薄膜は配向性を持つことが期待できるのでダイヤモンド、サファイア、石英及びNaClなど絶縁性透明基板を使用して高真空下で蒸着膜を作成し、基板依存性を研究する。Pd/Pt錯体混晶薄膜の加圧による色彩変化を詳しく調べ、圧力スケールとして使用できる圧力領域について検討する。また、その他の金属を組合せた混晶薄膜についても同様に研究する。色による圧力の決定は定性的であるが、吸収ピークのシフトにより圧力を決定することにより定量化することができる。Pt錯体ではd-p遷移吸収帯が加圧により赤外領域にシフトした圧力付近でPt錯体の電気抵抗の温度依存性が金属的になる。高圧下における電子スペクトルは紫外から赤外領域まで詳しく調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に行う予定であった混晶薄膜の基板依存性についての研究を次年度の課題としたので、この課題で使用する石英、サファイアなどの基板を購入する予定である。
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