研究実績の概要 |
金属イオンが一次元的に配列する金属-ジオンジオキシマート錯体は加圧すると色彩変化や電気抵抗の急減など極めて興味深い性質を示す.加圧による色彩変化は,色から圧力を決める圧力スケールとして使用できる.また,電気抵抗の急激な変化は圧力センサとして利用できる.混晶薄膜を用いると利用圧力領域を自由に設定できるので高圧下においてNi,Pd及びPt錯体を組み合わせた混晶薄膜の電子物性を詳細に研究し,新しい高圧力センサ材料の開発を目的としている. 金属-ジオンジオキシマート錯体混晶薄膜の作成方法について詳細に研究した.配位子をジメチルグリオキシムまたはジフェニルグリオキシムとした場合についての蒸着方法について検討した.具体的には単一蒸着源から金属イオンの異なる2種の錯体を蒸着する方法と蒸着源を二元化した場合について比較した.混合比1:1で作製した薄膜の吸収スペクトル は両者でほぼ一致していた.さらに,配位子の異なる2種の錯体について混晶薄膜の作製を試みた.吸収スペクトルを評価するとそれぞれの単体での結晶中における金属イオン間距離が近い錯体同士で作製した薄膜では,混晶化を示唆する結果が見出された. 加圧による色彩変化についての研究は金属ジメチルグリオキシマート錯体または金属ジフェニルグリオキシマート錯体の混晶薄膜,それぞれの積層膜及び金属シクロヘキサンジオンジオキシマート錯体単体の薄膜について行った.混晶化することにより色彩変化の色数が増えて,圧力範囲を広げることに成功した.積層薄膜についても加圧により変化が認識できる色数が増えた.さらに,金属ジオンジオキシマート錯体と同様の一次元構造をもつシアン化白金錯体について加圧による色彩変化の研究を行い,発光色が変化することを見出した.この錯体は蛍光を発することから,自発光型の新しい圧力インジケータとなる可能性がある.
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