研究課題/領域番号 |
24550208
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宮本 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30450662)
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研究分担者 |
直井 勝彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192664)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キャパシタ / ナノ材料 / 次世代蓄電デバイス |
研究概要 |
平成24年度は独自技術である超遠心力場下における液相反応技術(UC処理)を用いて、カーボンナノファイバー(CNF)に対し、電極活物質としてチタン酸水素(H2Ti12O25:HTO)及びブロンズ型二酸化チタン(TiO2(B))をそれぞれ複合化することでナノハイブリッドキャパシタ負極用複合体電極の創製法確立を試み、さらに得られた複合体電極の電気化学特性を調査した。 実験の結果、いずれの活物質もCNF上に高分散担持する手法を見出した。HTO/CNF複合体の電気化学特性は1C(=1時間における充放電)において、活物質当り230 mAh/gを示した。これは既に報告しているスピネル型チタン酸リチウム(Li4Ti5O12:LTO)/CNF複合体の理論容量:175mAh/gを超える発現容量であった。 また、TiO2(B)とCNFとの複合化は当初HTOを更に加熱脱水する事で作製可能と考えたが不純物を多く含み、ナノサイズレベルのTiO2(B)は得られなかった。そこで文献調査から水溶性四核チタン錯体を用い、UC処理と水熱合成を組合わせる事を検討し、CNFとの複合方法を探索した。その結果、約5 nmサイズのTiO2(B)をCNF上に高分散担持することに成功した。本複合体の電気化学特性は1Cにおいて活物質当り231 mAh/gとLTO/CNF及びHTO/CNF複合体を凌ぎ、さらに300C(=12秒での充放電)に於いても138 mAh/gを維持した。本複合体の電気化学特性は既にLTO/CNF複合体電極の性能を上回り、現在はキャパシタ電極として重要な充放電回数試験(サイクル試験)を行なえる状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標であるナノハイブリッドキャパシタとして、負極用複合体電極であるHTO/CNF及びTiO2(B)/CNF複合体の創製に成功した。特にTiO2(B)/CNF複合体の作製について採用したUC処理と水熱反応の組み合わせはUC処理を更に拡張可能である事を示しており、今後他の金属酸化物電極材料とナノ炭素材料を複合化する手法として有効であることを見出した。HTO/CNF複合体についても低速充放電であればLTO/CNF複合体を超えており、合成スキームがTiO2(B)よりも少ないステップで合成可能である事を考慮すると、今後の進展によりLTO/CNF複合体電極の代替材料として有用であると考えられる。 一方で正極用材料についてはオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4: LFP)をCNF上に担持した複合体電極の創製を実施した。LFP単体の合成方法としてゾルゲル反応を利用する方法を検討し、コスト等もふまえて原材料の選択を行なった。作製初期段階ではUC処理及び焼成によりLFPとCNFの複合化には成功したが粒子サイズは均一でなく、CNF中のLFP粒子の分散性も良好ではなかった。結果として複合体電極の電気化学特性は300Cでほとんど容量を発現せず、キャパシタとして使用できるレベルではなかった。得られたLFP/CNF複合体について様々な分光法を用いて要因を検討し、合成スキームへフィードバックする事で平成24年度末には300Cで約50 mAh/gの発現容量を示すに至ったが、負極材料として既に使用可能なLTO/CNFの容量レベル(約110 mAh/g)に達しておらず、更に合成スキームを見直す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
HTO/CNF複合体については1CでLTO/CNF複合体を上回るもののそれ以上の高速充放電特性に対し、課題が生じる。その原因の1つとして現状のHTO/CNF複合体中のHTO粒子サイズが不均一である事がわかっている。今後は均一なナノレベルのHTO粒子をナノ炭素材料上に高分散担持する手法の確立が必須検討事項である。これまでの検討からHTOの前段階であるチタン酸カリウム(KTO)の結晶成長状態が重要な事がわかって来た。そこで今後はKTOの生成に対し、原材料の変更・反応制御法をパラメーターとしてナノサイズレベルのKTOの生成法確立を実施する。 TiO2(B)/CNF複合体については最低限レベルの目標は達成したが、その理論容量からはさらに発現容量を高める事が出来るはずである。そこで今後は理論容量まで到達するべく、現状の複合体での充放電過程における律速段階を各種分光・電気化学測定で調査し、性能向上のキーポイントを見出す。また、総合的なキャパシタセルのエネルギー密度の増加には複合体中のTiO2(B)の含有比率を増加することも有効であるため、平成24年度が70%比だった複合比を80%まで増加する事を検討する。 正極材料としては引き続きLFP/CNF複合体電極の性能向上を検討するとともに、平成25年度は同じポリアニオン系であるオリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4: LMP)とCNF複合体の創製に着手する。LMPはLFPの反応電位(3.4V vs. Li/Li+)より高い反応電位(4.1V vs. Li/Li+)であるためキャパシタセルの作動電圧範囲を高める事ができ、エネルギー密度的に有利となる。ただし、これまでの報告からLMPは炭素材料との親和性が低いため、ナノ炭素材料との複合方法を検討しつつ、研究を進展させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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